平成30年度 公害防止管理者 水質概論 問8を解説|河川の植生による自浄作用(緩やかで広い水域が要る)
平成30年度 水質概論 問8は、川辺に生える水草が水をきれいにするしくみについての正誤問題です。最も不適切なものを選びます。
この問題のポイント
水草の茂る場所で水がきれいになる道筋は、粒子が沈む、付着微生物が有機物を分解する、植物と藻類が窒素やりんを取り込む、という三つに整理できます。五つの記述のうち四つはこの三つの道筋か、そこに至る研究の経緯を述べたものです。残る一つだけが仕組みではなく、その効果を引き出すための水域の作り方を述べています。分かれ目はここにあり、浄化のはたらきがどれも水と植物が触れ合う時間に支えられていることを踏まえると、そこで求められている条件が逆を向いていると分かります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(最も不適切な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 水際に群落をつくるヨシやマコモは扱いやすく、これらを用いた浄化の試みが数多く重ねられてきました。 |
| (2) | ○(正しい) | 茎が林立して流れを弱めるため、水に運ばれてきた粒子が沈んで底にたまりやすくなります。 |
| (3) | ○(正しい) | 茎や根の表面が微生物のすみかとなり、そこで有機物が分解されます。 |
| (4) | ○(正しい) | 付着した藻類と植物本体の双方が、成長のために窒素やりんを水から取り込みます。 |
| (5) | ×(最も不適切) | 求められるのは流れが速く狭い水域ではなく、流れが緩やかで広い水域です。これが正解です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
栄養塩の吸収は、植物や付着藻類が成長しながら少しずつ窒素やりんを体内へ取り込む現象です。化学反応で一瞬に片づくものではなく、生き物の代謝の速さで進みます。ですから浄化の量を決めるのは、水が植生の間をどれだけの時間かけて通り抜けるか、つまり接触時間です。同じ長さの区間でも、流れが緩やかであれば水は長くとどまり、水域が広ければ一度に多くの茎や根に触れられます。緩やかで広い水域ほど吸収が進むというのが設計の基本で、実際の浄化施設も、流入水をゆっくり分散させて通す形につくられます。
これに対して「流れが速く狭い水域を設ける」という条件は、接触時間を短くする向きであり、浄化効果を落とす方向です。しかも速い流れは、いったん沈んだ懸濁物質を巻き上げて下流へ運び去ってしまい、(2)で述べられた堆積の効果まで帳消しにします。茎を倒したり根を洗い出したりして植生そのものを傷めることもあり、いいことがありません。
もっとも、緩やかにすればするほど良いという単純な話でもありません。堆積した泥や枯れた植物体をそのままにすれば、取り込まれた窒素やりんは分解を通じて再び水に戻ります。植生浄化を成り立たせるには、刈り取って系外へ持ち出すところまでを含めて考える必要があります。取り込みだけでは水域から栄養塩が消えない、という一段先の理解まで押さえておきたいところです。
覚え方
- 植生浄化の三本柱は、粒子の沈降・付着微生物による分解・植物と藻類による栄養塩の吸収。
- 効き目を決めるのは接触時間。ゆっくり・広くが浄化の条件、速く・狭くは逆。
- 速い流れは沈んだ粒子を巻き上げる。堆積させたいなら流れを弱めるのが先。
- ヨシ・マコモは水際に立つ抽水植物。浄化実験の定番。
- 吸収しただけでは水域から窒素・りんは減らない。刈り取って持ち出して完了。
理解度チェック
植生による栄養塩の吸収効果を高めるには、水域をどのような条件に整えるべきか。
流れが緩やかで広い水域にして、河川水をゆっくり通すことです。栄養塩の吸収は生き物の代謝の速さで進むため、水と植物が触れ合う時間を長く取らなければ効果が出ません。流れが速く狭い水域では接触時間が足りません。
植生域で懸濁物質の堆積が進むのはなぜか。
茎や葉が水の流れを妨げて流速が落ちるためです。流れが弱まると粒子を運ぶ力が失われ、水中に浮いていた懸濁物質が沈んで底にたまります。逆に流れが速いと、いったん沈んだものまで巻き上げられてしまいます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月