平成30年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問28を解説|帯域ごとに合成してから引く
平成30年度 騒音・振動特論 問28は、機械をばねで浮かせる前と後に敷地の境で測った帯域別の値から、全体としてどれだけ静かになったかを求める計算問題です。数値を選びます。
この問題のポイント
与えられている値には人の感じ方に合わせた重み付けが済んでいるので、あとは帯域を一つにまとめて前後を引き算するだけです。まとめる作業はデシベルの足し算なので、真数に戻してから合計しなければなりません。帯域ごとの下がり幅を並べて平均したくなりますが、下がり幅が大きい帯域はもともと小さい帯域であることが多く、全体への効き方はまるで違います。表の見た目に引きずられると、実際より大きな低減量を答えてしまいます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 2 dBは、対策後に最も大きく残る帯域ひとつ分の下がり幅にすぎず、全体をまとめた差より小さすぎます。 |
| (2) | ×(誤り) | 4 dBはエネルギーで4割ほどに減る差ですが、合成した前後の開きはこれより大きくなります。 |
| (3) | ×(誤り) | 6 dBはエネルギーで4分の1になる差ですが、合成値の実際の減り方はこれより大きくなります。 |
| (4) | ○(正しい) | 帯域を合成すると対策前が約62.6 dB、対策後が約54.4 dBとなり、差は約8.2 dBで8 dBに最も近くなります。 |
| (5) | ×(誤り) | 10 dBはエネルギーが10分の1になる差で、下がり幅の大きい帯域だけを見た過大評価です。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 | 値 |
|---|---|---|
| 1 | 対策前の7帯域を真数に直す。104を単位にして並べる。 | 0.32/1.0/0.16/31.6 100/31.6/15.8 |
| 2 | 合計して10 log で戻す。log 1.81 は対数表から0.258。 | 180.5×104=1.81×106 60+2.58 ≒ 62.6 dB |
| 3 | 対策後も同じように真数に直す。 | 0.32/1.26/0.50/19.9 5.0/0.32/0.04 |
| 4 | 合計して10 log で戻す。log 2.74 は対数表から0.438。 | 27.4×104=2.74×105 50+4.38 ≒ 54.4 dB |
| 5 | 対策前から対策後を引く。 | 62.6-54.4 ≒ 8.2 dB |
| 6 | 検算として、それぞれ大きい方から3帯域だけで合成してみる。 | 前 約62.1 dB/後 約54.2 dB 差は約8 dBで変わらない |
ここが分かれ目
合成の作業では、最も大きい帯域から10 dB以上低い帯域はほとんど効かないという感覚が武器になります。対策前でいえば最大の帯域と、それに次ぐ二つの帯域だけで全体がほぼ決まり、いちばん小さい帯域は真数にすると最大の帯域の六百分の一ほどしかありません。下がり幅が26 dBもある帯域に目を奪われても、その帯域はもともと全体をほとんど押し上げていないので、低減量への貢献は見た目ほど大きくないのです。さらに、全体の高さを決める帯域は対策の前と後で入れ替わっています。前は最も高い値をもつ中ほどの帯域が、後はそれより一段低い帯域が全体を支えており、低減量はどれか一つの帯域の下がり幅とは一致しません。合成という手順を踏まなければ出てこない値です。
表をよく見ると、低い側の帯域では対策後のほうが大きくなっています。これは誤植ではなく、ばねで浮かせる対策の性質そのものです。支持した系には固有の揺れやすい周波数があり、その付近では揺れがかえって拡大します。絶縁の効果が出始めるのは固有振動数の√2倍より高い側で、ここでは7 Hzあたりから上ということになります。実際、その境目より下では値が横ばいか増えており、上では大きく減っています。減衰比が示されているのは、この拡大がどこまで抑えられるかを読ませるためで、低減量そのものの計算には使いません。条件として与えられた数値をすべて式に入れようとすると、かえって迷います。
覚え方
- 帯域別の値を一つにまとめるときは真数で合計してから対数へ戻す。帯域ごとの差を平均してはならない。
- 低減量は、前の合成値から後の合成値を引いた差。帯域ごとに引いてから合成しない。
- 最大の帯域から10 dB以上低い帯域は無視してよい。上位2つ拾えば合成値はほぼ決まる。
- ばね支持が効き始めるのは固有振動数の√2倍より高い周波数。それより低い側はむしろ増える。
- 問題文の条件がすべて計算に必要とは限らない。固有振動数や減衰比は表の形を説明する情報のこともある。
理解度チェック
帯域ごとの低減量を平均すれば、全体の低減量になりますか。
なりません。前と後をそれぞれ真数で合成して全体の値を出し、その差をとります。小さい帯域が大きく下がっても全体にはほとんど効きません。
弾性支持をしたのに、低い周波数で振動が大きくなることがあるのはなぜですか。
支持した系の固有振動数の付近では拡大するためです。絶縁の効果が現れるのは固有振動数の√2倍より高い周波数からで、それより低い側では低減できません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月