平成30年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問7を解説|表面を塞ぐと高音域が落ちる
平成30年度 騒音・振動特論 問7は、材料が音のエネルギーをどうやって減らすのかというしくみに関する正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
吸音材は種類ごとに得意な音域が違い、その違いはすべて「何がエネルギーを食っているか」で決まります。細かい隙間の中を空気が行き来する摩擦で減らすもの、板や空気の塊が揺れる共振で減らすものがあり、効く周波数の幅も広いものと狭いものに分かれます。分かれ目は、空気が材料の中を出入りできるかどうかという一点です。この通り道を人の手で塞いでしまう処理を加えたとき、性能が上がるのか下がるのかが問われています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 繊維や気泡の隙間を空気が往復する摩擦で音を熱に変える材料なので、空気の動きが細かく激しい高い音ほどよく効きます。低い音は隙間を素通りしやすく、効きが鈍くなります。 |
| (2) | ×(誤り) | 表面に塗膜をつくると細かい孔の入口が埋まり、空気が出入りできなくなります。摩擦で稼いでいた高音域の吸音率は大きくなるどころか落ちます。 |
| (3) | ○(正しい) | 硬い壁のすぐ前では空気がほとんど動けません。壁から離して空気層をつくると材料が空気のよく動く位置に近づき、波長の長い低い音まで捕まえられるようになります。 |
| (4) | ○(正しい) | 板が重り、閉じ込められた空気がばねとして働く振動系なので、空気層の厚さを変えればばねの硬さが変わります。よく吸う周波数もその効き具合も動きます。 |
| (5) | ○(正しい) | 首の部分の空気が重り、空洞の空気がばねになって共振する構造です。共振する周波数の近くだけを鋭く吸うので、狙った音を狙い撃ちする用途に使われます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
細かい隙間だらけの材料が音を吸うのは、その隙間が空気の通り道として生きているからです。音が来ると隙間の中の空気が細かく往復し、狭い壁面とこすれ合って熱になります。吸音の正体はこの摩擦であって、材料そのものが柔らかいことでも軽いことでもありません。
ここに塗装を施すと、表面の孔がふさがれて空気が中に入れなくなります。通り道を断たれた材料は、音を跳ね返すだけの板に近づきます。しかも影響が真っ先に出るのは、この材料が本来いちばん得意にしていた高い音域です。細かく速い空気の動きこそ表面のすぐ内側で起きているため、入口を封じられた損失がそのまま高音域の落ち込みとして表れます。
この肢は変化の向きを反対にしてあります。塗れば高音域が伸びると読ませておきながら、実際には落ちる操作だからです。仕上げのために塗ってよいのかという現場的な疑問に引きずられると、表面を整える処理は性能を上げるはずだと読み違えてそのまま通してしまいます。表面を覆う処理は、吸音の観点では基本的に犠牲を払う操作だと押さえておくべきです。
なお、同じ「覆う」でも、通気を残したまま保護する方法なら高音域の性能は保たれます。塗膜のように連続した膜をつくるかどうかが境目で、膜になった時点で吸音の主役は空気の摩擦から膜の振動へ移ります。
覚え方
- 細かい隙間の材料は空気が出入りできてこそ吸音する。塞げば性能は落ちる。
- 隙間で吸うタイプは高い音が得意。低い音を狙うなら壁から離して空気層をつくる。
- 板や首の空気が揺れて吸うタイプは、共振する周波数の近くだけを狭く吸う。
- ばねの役をする空気層は、厚さを変えれば吸う周波数も変わる。
- 「表面を仕上げると良くなる」は吸音では通用しない。通気をつぶす処理は必ず疑う。
理解度チェック
細かい隙間をもつ吸音材が、低い音より高い音でよく効くのはなぜですか。
音のエネルギーを隙間の中の空気の摩擦で熱に変えているためです。高い音ほど空気の往復が細かく激しくなり摩擦が稼げますが、低い音は波長が長く、薄い材料の中では空気がほとんどこすれずに通り抜けてしまいます。
吸音材と硬い壁の間に空気層を設けると、どの音域に効きますか。
低い音域に効きます。壁面では空気が動けず摩擦が生まれないため、壁から離して空気のよく動く位置に材料を置くと、波長の長い低音まで吸えるようになります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月