平成30年度 公害防止管理者 騒音・振動概論 問23を解説|低いほど大きく感じるとは限らない
平成30年度 騒音・振動概論 問23は、条件の違う揺れを二つ一組にして左のほうが大きいと主張する式が5つ並び、その中から成り立たないものを選ぶ計算問題です。
この問題のポイント
やることは決まっていて、大きさを加速度にそろえ、振動加速度レベルに直し、向きと振動数に応じた感覚補正を足して比べるだけです。分かれ目は、鉛直方向で最も敏感なのはいちばん低い振動数ではなく中ほどの帯域だと分かっているかどうかです。低いほど大きく感じると思い込むと、ここで足をすくわれます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(成り立たない大小関係)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 加速度が同じで、鉛直の8 Hzは平坦部、16 Hzは1オクターブ分引かれます。約60 dBと約54 dBで左が大きく、大小関係は成り立ちます。 |
| (2) | ○(正しい) | 同じ4 Hzでも、鉛直は平坦部で補正なし、水平は平坦部を1オクターブ外れて引かれます。約60 dBと約54 dBで左が大きくなります。 |
| (3) | ×(誤り) | 鉛直の2 Hzは平坦部より低い側なので補正が引かれ、平坦部の4 Hzに届きません。約57 dBと約60 dBで、左のほうが小さくなります。 |
| (4) | ○(正しい) | 左は速度から換算すると加速度が約2.5倍になり、鉛直の平坦部で約68 dB。右は水平の平坦部で約60 dB。左が大きくなります。 |
| (5) | ○(正しい) | 左は換算後の加速度レベルが約74 dB、水平8 Hzの補正で約62 dB。右の約60 dBをわずかに上回ります。 |
計算の手順と分かれ目
| 手順 | 内容 | 値 |
|---|---|---|
| 1 | 単位をSIにそろえる。 | 1 cm/s2=10-2 m/s2 0.1 cm/s=10-3 m/s |
| 2 | 速度で示された側を加速度に換算する。加速度=2πf×速度。 | 4 Hz:2π×4×10-3≒0.025 m/s2 8 Hz:2π×8×10-3≒0.050 m/s2 |
| 3 | 基準の加速度10-5 m/s2で割り、20 log をとる。 | 10-2 m/s2→60 dB 0.025 m/s2→約68 dB 0.050 m/s2→約74 dB |
| 4 | 向きに応じた感覚補正を足す。鉛直の平坦部は4〜8 Hz、水平の平坦部は1〜2 Hz。平坦部から1オクターブ外れるごとに引かれる。 | 鉛直:2 Hzは約−3、4〜8 Hzは0、16 Hzは約−6 水平:2 Hzは0、4 Hzは約−6、8 Hzは約−12(dB) |
| 5 | 左右の振動レベルを見比べる。 | (1)60>54/(2)60>54/(3)57<60/(4)68>60/(5)62>60 |
並べてみると、成り立たないのは(3)だけです。ほかの4つはいずれも左が右を上回っており、(5)のように差が2 dBしかない組もありますが、向きが違うぶんの補正差をきちんと引けば取り違えることはありません。
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
この肢は加速度も向きも同じで、違うのは振動数だけです。低いほうが大きいと主張していますが、人の感じ方はそうなっていません。鉛直方向で最も敏感なのは4〜8 Hzの平坦部であり、そこより低い側でも感じにくくなるので補正が差し引かれます。2 Hzは平坦部の下端である4 Hzより1オクターブ低く、そのぶん振動レベルは小さく出ます。
引っかかりやすいのは、低周波ほど厄介という別分野の印象を持ち込んでしまう場合です。しかし全身に受ける揺れの感じ方は山なりの特性で、高い側だけでなく低い側でも落ちていきます。同じ加速度なら、平坦部に近い振動数のほうが必ず勝つと押さえておけば、(1)から(3)までは計算せずに判定できます。
覚え方
- 感じ方の特性は山なり。鉛直の頂上は4〜8 Hz、水平の頂上は1〜2 Hz。頂上の外は上も下も引かれる。
- 加速度が同じなら、頂上に近い振動数・近い向きが勝つ。計算前に見当がつく。
- 速度で与えられたら 加速度=2πf×速度。振動数が高いほど加速度は大きく化ける。
- 1 cm/s2の振動加速度レベルは60 dB。この一つを覚えておくと計算が速い。
理解度チェック
鉛直振動で加速度を変えずに振動数を下げれば、振動レベルは必ず上がりますか。
いいえ。最も敏感な4〜8 Hzを下回ると感じにくくなり、感覚補正が差し引かれます。加速度が同じでも振動レベルは小さくなります。
加速度振幅1 cm/s2の振動加速度レベルはいくつになりますか。
60 dBです。1 cm/s2は10-2 m/s2で、基準の10-5 m/s2の1000倍。20 log 1000=60 dB となります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月