平成30年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問8を解説|膜分離法(電気透析はイオンで分ける)
平成30年度 汚水処理特論 問8は、膜を使って水と溶けているものを分ける各方式の性質を並べた正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
五つの記述のうち四つは、膜分離を穴の大きさの順に並べたときの各段階を述べています。粗いほうから細かいほうへ、粒子や細菌を止める膜、高分子を止める膜、そしてイオンまで止める膜へと連なり、圧力で水を押し通すという原理は共通です。残る一つだけが原理そのものを異にする方式で、水を押し込むのではなく電気の力でイオンを動かす方式が扱われています。分かれ目は、この方式が使う膜が何を基準に通す・通さないを決めているかで、大きさで分けるのか電荷で分けるのかを取り違えると引っかかります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 膜のなかで最も粗い部類で、目に見えない濁りのもとや細菌を止める用途にあたります。 |
| (2) | ○(正しい) | 分子量で区切りを表す段階の膜で、水に溶けた高分子を止める用途に使われます。 |
| (3) | ○(正しい) | 濃い側に浸透圧を超える圧力をかけて水だけを押し戻す、という逆浸透の原理どおりです。 |
| (4) | ○(正しい) | 逆浸透より穴が粗い分だけ低い圧力で運転でき、その代わり塩化ナトリウムを止める割合も下がります。 |
| (5) | ×(誤り) | 配列するのは分子量ではなくイオンの電荷で選び分ける膜です。これが正解です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
電気透析法で並べるのは、陽イオンだけを通す膜と陰イオンだけを通す膜、すなわちイオン交換膜です。膜そのものが正または負の電荷を帯びており、同じ符号のイオンははね返し、反対符号のイオンだけを通します。ここに直流電圧をかけると、陽イオンは陰極の側へ、陰イオンは陽極の側へ動き出します。ところが進行方向にある膜が自分を通してくれる区画と、通してくれない区画が交互に現れるため、イオンが出ていくだけの部屋とイオンが入ってくるだけの部屋が一つおきにできあがります。前者が脱塩水、後者が濃縮液です。
したがって分子量で区切って通す膜を並べた装置だとする説明は、分子の大きさでふるい分ける膜と、電荷でイオンを選り分ける膜を取り違えています。分子量を基準に区切るのは限外ろ過膜の考え方であって、電気透析の膜の性質ではありません。区画が一つおきに脱塩水と濃縮液になるという後半は正しく、誤りは膜の選択性の根拠が「分子量」とされている点に絞られます。逆浸透が圧力で水を通してイオンを残すのに対し、電気透析は電気でイオンを抜いて水を残すという、動かす相手が逆の関係も押さえておくと混同しません。
他の四つは、圧力で駆動する膜を粗いほうから細かいほうへ並べたときの各段の説明です。精密ろ過は懸濁している微細な粒子や細菌を止め、限外ろ過はそれをすり抜ける溶けた高分子を止めます。逆浸透はさらに細かく、濃い溶液の側に浸透圧を上回る圧力をかけて、水だけを膜の向こうへ押し出します。ナノろ過は逆浸透と限外ろ過の中間にあたり、逆浸透より低い圧力で運転できる代わりに、塩化ナトリウムのような小さなイオンを止める力は逆浸透に及びません。細かい膜ほど高い圧力が要り、除去できる範囲も広がるという一本の軸で四つが並んでいます。
覚え方
- 電気透析はイオン交換膜。分けるのは大きさではなく電荷。
- 圧力で駆動する膜は、粗い順に精密ろ過・限外ろ過・ナノろ過・逆浸透。細かいほど高圧。
- 逆浸透は「水を通してイオンを残す」、電気透析は「イオンを抜いて水を残す」。動かす相手が逆。
- 限外ろ過だけは孔径ではなく分子量で区切りを表す。「分子量」と出たら限外ろ過を疑う。
- ナノろ過は逆浸透の弟分。低圧で済むが、塩を止める力はその分だけ弱い。
理解度チェック
電気透析法で用いる膜は、何を基準に溶質を選び分けているか。
イオンの電荷です。陽イオンだけを通す膜と陰イオンだけを通す膜を交互に並べ、直流電圧でイオンを移動させます。その結果、イオンが抜けていく脱塩室とイオンが集まる濃縮室が一つおきにできます。分子量の大小でふるい分けているわけではありません。
ナノろ過法と逆浸透法の違いを、操作圧力と塩化ナトリウム除去率の観点から述べよ。
ナノろ過法は逆浸透法より操作圧力が低く、その代わり塩化ナトリウムの除去率も低くなります。膜が逆浸透ほど緻密でないため、動力は軽く済む一方で小さなイオンは通り抜けやすい、というトレードオフです。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月