平成30年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問2を解説|工場排水対策(水を減らすと濃度は上がる)
平成30年度 汚水処理特論 問2は、工場から出る水をどう分け、どう減らしていくかという事前対策の考え方についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
五つのうち四つは、処理装置を建てる前にやっておく作業の話です。どの水を混ぜずに分けるか、社内のどこで水がどれだけ動いているかを把握できているか、洗い方を工夫して水そのものを減らせないか、生産工程側の技術者と一緒に検討できているか。いずれも「処理する前に減らす・分ける」という同じ発想でつながっています。残る一つだけが毛色を変え、水量を減らしたときに排水の中身がどう動くかを述べています。分かれ目はここで、汚れの総量と濃度を同じものとして扱ってしまうと引っかかります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 汚れの質も量も違う水をひとまとめにすると、きれいな水まで処理対象になって設備が大きくなるため、系統を分ける検討が先に来ます。 |
| (2) | ○(正しい) | どこで何に水を使い、どこから出ているかを数字で押さえないと、削減の余地も分離の切り口も見つかりません。 |
| (3) | ○(正しい) | きれいな水を仕上げ側に入れて汚れた側へ順に送る流し方は、同じ仕上がりをより少ない水量で達成できます。 |
| (4) | ○(正しい) | 水の出方は生産工程そのもので決まるため、処理側だけでは変えられず、両者の連携が前提になります。 |
| (5) | ×(誤り) | 汚れの総量が変わらないまま水量だけ減るので、濃度は減少ではなく上昇します。これが正解です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
汚濁負荷量は、濃度と水量の掛け算で決まります。ある製品を一定量つくるときに出てくる汚れの総量が変わらないのなら、この積は一定に保たれます。積が一定のまま片方(水量)を小さくすれば、もう片方(濃度)は必ず大きくなります。「排水量を減らせば濃度も減少する」という記述は、掛け算の関係を足し算のように扱ってしまった点で誤りです。水を絞ると、同じ量の汚れがより少ない水に溶け込むのですから、濃い水が少しだけ出てくることになります。
この向きを取り違えると、実務でも判断を誤ります。節水を進めて水量を半分にすれば、公共用水域へ流れ込む汚れの総量、つまり総量規制で見られる負荷量は減らせます。しかし排水基準は多くの項目が濃度で定められているため、節水したことで濃度基準のほうは逆に厳しくなるという関係になります。排水量の削減にあわせて処理装置の側も高い濃度に耐えられる設計に見直す必要がある、というのがこの肢の裏返しの教訓です。
他の四つは、処理装置を建てる前の段取りとして押さえておくべき内容です。製造に使った水と、熱を運んだだけでほとんど汚れていない水と、人の生活から出る水では、汚れの種類も量もまるで違います。これらを混ぜてしまうと、汚れていない大量の水まで処理設備を通すことになり、装置は大きく、運転費は高くつきます。だからまず系統を分ける。そのためには社内の水の流れを数字で把握しておく必要があり、洗浄工程では水の流し方を組み替えて必要水量そのものを削り、さらに踏み込むなら生産プロセス側に手を入れる、という順に対策が深くなっていきます。
覚え方
- 負荷量=濃度×水量。総量が同じなら、水を減らすほど濃度は上がる。
- 節水は総量規制には効くが、濃度で決まる排水基準にはむしろ逆風。
- 排水対策の順番は「分ける→減らす→処理する」。処理は最後の手段。
- 汚れていない水を汚れた水に混ぜない。混ぜた瞬間に全部が処理対象になる。
- 水収支を数字で押さえていない工場に、削減の打ち手は見つからない。
理解度チェック
製品あたりの汚濁負荷量が変わらないまま排水量を半分にすると、排水中の汚濁物質濃度はどう動くか。
およそ2倍に上がります。負荷量は濃度と水量の積なので、積が一定のまま水量が半分になれば濃度はその分だけ高くなります。公共用水域へ出る汚れの総量は減っても、濃度で定められた基準に対しては条件が厳しくなる点に注意が必要です。
製造排水・冷却排水・衛生排水を混ぜて処理するのが得策でないのはなぜか。
汚れの種類も濃度もまったく違うためです。ほとんど汚れていない冷却水まで一緒にすると、処理すべき水量だけが膨らんで装置が大型化し、運転費も上がります。系統を分ければ、汚れた水だけを狙って処理でき、きれいな水は再利用にも回せます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月