平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問10を解説|反応槽の滞留時間(水を足すか抜くかでHRTは変わる)
平成29年度 汚水処理特論 問10は、同じ大きさの槽をつないだ五つの流れ図から、滞留時間の合計が指定どおりになるものを選ぶ問題です。正しいものを選びます。
この問題のポイント
図に描かれているのはどれも同じ容量の箱を直列につないだだけの単純な流れですが、途中で水が加わったり分かれたりする枝が付いています。滞留時間は「容量÷流量」で決まるのに、ここで使う流量は装置全体に入ってくる量ではなく、その槽を実際に通り抜ける量だという点が分かれ目です。枝を見落として槽の数だけで足し算をすると、まったく違う答えにたどり着きます。槽の数と、枝の位置と向きを二つセットで読むのがこの問題の作法です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 合計HRT | 読み解き |
|---|---|---|
| (1) | 2T | 槽が二つ並ぶだけで、途中の出入りがありません。どちらの槽も同じ量が通るのでTが二つ分です。 |
| (2) | 1.5T | 二つ目に入る手前で最初と同じ量が合流します。二つ目を通る量が倍になるため、そこはT÷2に縮みます。 |
| (3) | 3T | 二つ目に入る手前で半量が外へ分かれます。二つ目を通る量が半分になるので、そこは2Tに伸びます。 |
| (4) | 2.5T | 槽は三つですが、三つ目の手前で同量が合流します。前二つがTずつ、最後がT÷2です。 |
| (5) | 4T | 槽は三つで、三つ目の手前で半量が外へ分かれます。前二つがTずつ、最後が2Tとなり合計4Tです。これが正解です。 |
ここが分かれ目
水理学的滞留時間(HRT)は、槽の容量を、その槽を通過する流量で割った値です。分母に置くべきなのは装置の入口に入ってくる量ではなく、あくまでその槽自身を通る量にほかなりません。五つの槽がどれも同じ容量Vだからといって、滞留時間まで同じだと決めつけると必ず外します。枝が一本入るだけで、その先の槽の滞留時間は倍にも半分にも動きます。
動き方は二通りしかありません。途中で水が合流すれば下流の流量は増え、滞留時間は短くなります。逆に途中で水が分かれて外へ出れば下流の流量は減り、滞留時間は長くなります。合流した量が元と同じなら流量は二倍、滞留時間は半分。分かれた量が元の半分なら流量は半分、滞留時間は二倍。この比例と反比例の関係さえ押さえれば、図を見て暗算で足していけます。
合計を大きくしたければ、槽を増やすか、途中で水を抜くかのどちらかです。この問題では槽を三つ並べたうえで最後の槽の手前で半量を抜く形が、T+T+2Tとなって求める合計に届きます。槽が二つしかない図はどれだけ工夫しても足りず、槽が三つでも途中で水を足してしまう図は合計が減ってしまいます。槽の数だけを数えて選ぶと、同じ三槽でも合流のある図を選んでしまいます。
覚え方
- HRTは容量÷その槽を通る流量。装置全体の流入量ではない。
- 途中で水が合流すればHRTは短く、外へ分かれればHRTは長い。
- 流量が二倍ならHRTは半分、流量が半分ならHRTは二倍。反比例で覚える。
- 同じ容量の槽でも、置かれた位置と枝の有無で滞留時間は別物。
- フロー図の問題は、箱の数と枝の向きを二つセットで読む。
理解度チェック
同じ容量の槽が二つ直列に並び、その間で流量の半分が系外へ分かれるとき、二つ目の槽のHRTはどうなりますか。
一つ目の槽の二倍になります。HRTは容量をその槽を通る流量で割った値なので、通過する量が半分になれば滞留時間は二倍に伸びます。
槽の手前で流入と同じ量の水が合流すると、その槽のHRTはどう変わりますか。
半分に縮みます。合流によって通過流量が二倍になるためです。容量が同じでも、上流に合流点があるかどうかで滞留時間はまったく変わります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月