水理学的滞留時間とは?水面積負荷との関係と沈殿池の除去率を整理
どれだけ長くとどまるか。容積を流量で割るだけです。沈殿池では、これが水深と水面積負荷でも書けます。
この記事の要点
水理学的滞留時間は容積を流入水量で割った値、水面積負荷は流入汚水量を水面積で割った値です。
- 沈殿池では水深÷水面積負荷でも出せる
- 普通沈殿の除去率は沈降速度÷水面積負荷
- 沈降分離は普通沈殿と凝集沈殿に大別
汚水処理特論の問1から問3では、沈殿池の計算が定番です。沈降速度そのものは別の式で決まりますが、それを池の大きさと結びつけるのが水理学的滞留時間と水面積負荷です。2つの割り算だけで解けます。
水理学的滞留時間とは
流入水量に対して、反応槽の容積がどれだけあるかを時間で表した値です。流入水量と容積が分かれば、容積を流入水量で割って求まります。
反応槽をいくつ並べるかで合計値が変わるため、フロー図を見て各槽の滞留時間を足す形でも問われます。汚泥滞留時間が汚泥の居座る時間なのに対し、こちらは水そのものの居座る時間です。
水面積負荷との関係
沈殿池では、もう1つの指標が使われます。水面積負荷(表面積負荷)は、流入汚水量を沈殿池の水面積で割った値です。
| 指標 | 求め方 |
|---|---|
| 水理学的滞留時間 | 容積 ÷ 流入水量 |
| 水面積負荷 | 流入汚水量 ÷ 水面積 |
| 沈殿池の滞留時間 | 水深 ÷ 水面積負荷 |
容積は水面積に水深を掛けたものなので、沈殿池の滞留時間は水深を水面積負荷で割っても出せます。水深3メートル、水面積負荷が1日1平方メートル当たり30立方メートルなら、0.1日つまり2.4時間です。
容積を分解すると2つの指標がつながる。
普通沈殿の除去率
粒子が沈みきるかどうかは、沈降速度と水面積負荷の大小で決まります。普通沈殿における固形物の除去率は、装置内の水の流れが理想状態にあると仮定して、表面積負荷と固形物の沈降速度分布によって決まります。
沈降速度が水面積負荷以上の粒子はすべて沈み、それより遅い粒子は沈降速度を水面積負荷で割った割合だけ除去されます。
滞留時間4時間、容積200立方メートル、深さ4メートルの横流式沈殿池なら、水面積は50平方メートル、流量は1時間当たり50立方メートルなので、水面積負荷は1時間当たり1メートルです。毎分1センチメートルで沈む粒子の除去率は60パーセントになります。
沈降分離の分け方と装置
沈降分離は大別すると、普通沈殿と凝集沈殿に分けられます。
「凝集沈殿装置の代表的なものは、都市下水や有機性工場排水を活性汚泥法で処理する場合の最初沈殿池である」という記述は誤りです。最初沈殿池は薬品を使わずに沈める側にあたります。
装置の工夫も問われます。敷地に十分な余裕がないときは、沈降槽内に多数の傾斜板を挿入して有効分離面積を増大させます。汚泥の濃縮だけを目的とした沈殿装置はシックナーと呼ばれます。
汚水処理特論での問われ方
水理学的滞留時間と水面積負荷は、汚水処理特論と水質関係技術特論で、平成29年度から令和6年度までに5回出ています。
| 年度・問 | 問われ方 | 公式正答 |
|---|---|---|
| 平成29年度 汚水処理特論 問10 | 反応槽のフローから滞留時間の合計を求める | 5 |
| 令和3年度 汚水処理特論 問1 | 横流式沈殿池で3種類の粒子の除去率を求める | 3 |
| 令和4年度 汚水処理特論 問3 | 水面積負荷と水深から滞留時間を求める | 1 |
| 令和5年度 技術特論 問2 | 最初沈殿池を凝集沈殿装置の代表とする、が誤り | 2 |
| 令和6年度 汚水処理特論 問15 | 硝化槽の滞留時間から酸素消費量を求める | 4 |
5回のうち4回が計算で、いずれも容積と流量、または水深と水面積負荷が条件として与えられます。割り算の向きを間違えなければ取れます。
混同しやすい用語
水面積負荷 と 水理学的滞留時間
同じ池を、別の切り口で表した値です。
水面積負荷は流入汚水量を水面積で割った値で、単位は長さを時間で割った形になります。滞留時間は容積を流入水量で割った値で、単位は時間です。水深で結びつくので、片方が分かればもう片方も出せます。
理解度チェック
水面積負荷は、何を何で割った値か。
答え:流入汚水量を、沈殿池の水面積で割った値
表面積負荷とも呼ばれます。
水深3メートル、水面積負荷が1日1平方メートル当たり30立方メートルのとき、滞留時間は何時間か。
答え:2.4時間
3を30で割ると0.1日、つまり2.4時間です。
まとめ
沈殿池の計算は、2つの割り算でつながります。
水理学的滞留時間は容積を流入水量で割った値、水面積負荷は流入汚水量を水面積で割った値です。
沈殿池なら水深を水面積負荷で割っても滞留時間が出る、普通沈殿の除去率は沈降速度を水面積負荷で割る、という2点もあわせて押さえます。
参考
- 水理学的滞留時間と水面積負荷(容積と流入水量による滞留時間、流入汚水量と水面積による表面積負荷、水深との関係、普通沈殿の除去率と沈降速度分布、沈降分離の分類、傾斜板による有効分離面積の増大、シックナー)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論/水質関係技術特論 出題範囲・公式正答(平成29年度 問10、令和3年度 問1、令和4年度 問3、令和5年度 問2、令和6年度 問15)
※ この記事の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
除去率で、割る向きを逆にしないことです。
沈降速度を水面積負荷で割ります。分子が沈む速さ、分母が池の負荷です。1を超えたら100パーセントとして扱います。