平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類概論 問12を解説|前駆体からの生成とデノボ合成
平成30年度 ダイオキシン類概論 問12は、すでにベンゼン環と塩素を備えた分子が出発点となってダイオキシン類ができる道すじについて、当てはまらない記述を1つ選ぶ問題です。不適当なものを選びます。
この問題のポイント
焼却炉でダイオキシン類ができる道すじは、大きく二本に整理されています。一方は、もとから環と塩素を持つ分子がつながったり閉じたりしてできる道すじ、もう一方は、環すら持たない炭素のかたまりから飛灰の上で組み上がっていく道すじです。本問は前者だけを土俵に指定しているので、正誤ではなく土俵の外にある記述はどれかを探す作りになっています。反応が起きる場所や抑制剤の話に気を取られると、経路の取り違えを見落とします。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(不適当な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | カルシウムなどの酸化物は塩素分を捕らえて塩素化を進みにくくするため、抑制側に働くと説明されています。 |
| (2) | ×(不適当) | 炭素の粒から組み上がる道すじはもう一方の経路の説明で、環と塩素を備えた分子を出発点とする本問の土俵には収まりません。 |
| (3) | ○(正しい) | 塩素のついたフェノールが二つ結びついて酸素2個の橋を作る反応は、この経路の代表例です。 |
| (4) | ○(正しい) | 二つの環が単結合でつながった分子が酸化を受けて環を閉じると、酸素1個の骨格に変わります。 |
| (5) | ○(正しい) | 気相の中だけで進む反応と、飛灰やダスト表面で進む反応の両方が知られており、場の違いで二通りに分かれます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが不適当)
この肢が語っているのは、炭素質の粒が酸化と塩素化を受けながら、環を持たない状態から一気に骨格まで組み上がる道すじです。出発点に芳香環がないところが決定的な違いで、これは前駆体を経る経路とは別枠に分類されます。名前のとおり「一から作る」型の反応で、燃焼が終わった後の低温域を通過する間に、飛灰に含まれる銅などの金属が触媒となって進みます。出発物質が違えば経路も別という線引きを持っていないと、内容として間違っていないぶん見逃してしまいます。
これに対し前駆体を経る経路は、すでに環と塩素がそろった分子どうしを縫い合わせる作業にあたります。塩素のついたフェノールが二つ結合して酸素の橋を2本かければジオキシン骨格になり、二つの環が単結合でつながった分子が酸素を受け取って環を閉じれば酸素1本の骨格になります。材料がすでに半完成品かどうかが、二つの経路を分ける唯一の目印です。
実務側の対策も経路によって重点が変わります。前駆体経路は、原料や燃料に塩素を含む化合物を持ち込まないこと、そして完全燃焼させて半完成品を残さないことが効きます。もう一方の経路には、燃焼後のガスが低温域にとどまる時間を短くする急冷が効きます。どちらの経路にも共通して効くのが塩素分とダストの抑制で、アルカリ土類金属の酸化物が使われるのもこの流れにあります。なお、経路が働きやすい温度域は文献によって示し方に幅があるため、ここでは順番と仕組みだけを押さえておきます。
覚え方
- 生成経路は二本立て。半完成品からつなぐ前駆体経路と、炭素の粒から組み上げるデノボ合成。
- 出発点に芳香環があるかどうかが分岐点。炭素粒が主語ならデノボ側。
- 前駆体経路の型は二つ。二量化して酸素の橋を2本かける型と、環を閉じて酸素1本にする型。
- 反応の場は気相と固体表面の両方。飛灰の上では金属が触媒になる。
- 抑制の柱は、塩素分を持ち込まない・完全燃焼・低温域を急いで通り抜ける。
理解度チェック
前駆体経路とデノボ合成は、何で見分けますか。
出発物質で見分けます。すでにベンゼン環と塩素を持つ分子から始まれば前駆体経路、環を持たない炭素質から始まればデノボ合成です。
アルカリ土類金属の酸化物は、どう働きますか。
生成を抑える向きに働きます。塩素分を捕らえて塩素化を進みにくくするためと説明されています。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月