平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類概論 問9を解説|融点・蒸気圧・ヘンリー定数の比較
平成30年度 ダイオキシン類概論 問9は、塩素が4個ついた三つの化合物群を横並びにして、結晶の融けにくさ・常温で気体になりやすさ・水中から空気へ抜けやすさの順位を答えさせる穴埋め問題です。ア~ウに入る語句の正しい組合せを選びます。
この問題のポイント
比べられているのは、二つのベンゼン環を何でつないでいるかだけが違う三兄弟です。酸素2個で縫い留めたもの、酸素1個と炭素どうしの結合でつないだもの、酸素を持たず環を直接つないだもの、という骨格の差がそのまま物性の順位に効いてきます。引っかけの核心は、イとウを別々の物質に振り分けたくなるところにあります。蒸気圧が最大のものとヘンリー定数が最大のものは同じ骨格になり、そこを疑うと選択肢を絞りきれません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)
各選択肢の正誤
| 空欄 | 入る語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | TeCDDs | 二つの環が2個の酸素で上下から留められ、分子全体が硬い平面になります。結晶に隙間なく積み重なるため、融点は三者で最も高くなります。 |
| イ | TeCBs | 酸素の橋がなく、環どうしが単結合でつながって自由にねじれます。分子どうしが密着しにくいぶん結晶から抜け出しやすく、常温の蒸気圧が最も高くなります。 |
| ウ | TeCBs | ヘンリー定数は蒸気圧を水への溶けやすさで割った量です。蒸気圧が最も高く、しかも水になじみにくいため、水面から空気へ最も抜けやすくなります。 |
ここが分かれ目
順位を決めているのは、環と環のつなぎ方のひと目盛りです。酸素2個で二重に留められた骨格は、ねじれる自由がまったく残っていません。板のように平らな分子は結晶の中でぴたりと重なり、格子を壊すのに多くの熱がいります。これが融点の首位をジオキシン骨格が取る理由です。逆にビフェニル骨格は、環と環をつなぐ単結合が回転し、しかも結合のそばに塩素が居座って互いを押しのけるため、二つの環が同じ平面に並びません。平らに重なれない分子は結晶が緩く、低い温度で融け、常温でも気体になって出ていきます。
もうひとつの分かれ目が、ヘンリー定数を水への溶けやすさだけで判断してしまう誤りです。ヘンリー定数は気体になろうとする勢いと、水に留まろうとする力の比で決まります。ビフェニル骨格は蒸気圧が高いという分子と、水になじみにくいという分母の両方が同じ向きに働くため、比の値がいちばん大きくなります。溶けにくさだけを見てジオキシン骨格を選ぶと、蒸気圧の低さを見落とすことになります。結果として、イとウには同じ語句が入り、両者を別々の物質にした組合せはすべて外れます。
覚え方
- 環を留める酸素が多いほど平面で硬い。酸素2個の骨格が融点の首位、酸素0個の骨格が蒸気圧の首位。
- ヘンリー定数は蒸気圧÷水への溶けやすさ。溶けにくさだけでは決まらない。
- 融点が高い=結晶が壊れにくい=蒸気圧が低い。二つの順位はおおむね逆向きに並ぶ。
- 蒸気圧が高い成分ほど、大気中ではガス状の割合が増え、粒子に付いた形では減る。
理解度チェック
環と環を酸素でつないだ骨格の融点が高くなるのはなぜですか。
分子が平面に固定されるからです。ねじれない板状の分子は結晶の中で密に積み重なり、格子を壊すのに高い温度が必要になります。
ヘンリー定数が大きいとは、どういう性質を指しますか。
水中から空気へ抜けやすいという性質です。蒸気圧が高く、かつ水に溶けにくいほど大きくなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月