平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問20を解説|工場排水の試料採取
平成30年度 ダイオキシン類特論 問20は、工場から出る水をくみ取るときの容器の選び方と、現場での手順を問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
水質分析の現場では、容器を採る水で二、三度すすいでからくみ取るのが定石です。前に入っていたものを追い出し、容器由来の影響を消すためで、多くの項目ではこれが正解になります。ところがこの物質群は例外で、同じ手順がそのまま損失につながります。器壁に張り付く性質を持つ相手に、すすぎという操作は目減りの機会にしかならないからです。ほかの選択肢は、ガラスを選ぶこと、栓の材質を絞ること、酸化を止める薬剤を加えること、通水して捕らえる方式もあること、と実務の定めをなぞっています。定石が通じない一点を見抜けるかが問われています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 溶剤で洗える材質であること、有機物が溶け出さないことが必要なため、指定がなければガラス製を用います。樹脂製は汚染源になり得ます。 |
| (2) | ○(正しい) | 酸化力の残った水では保存中に組成が変わるため、残留分に見合う量の還元剤を加えて打ち消します。規格が示す添加量どおりです。 |
| (3) | ○(正しい) | ゴムやコルクは有機成分を含み、また相手を吸い込みます。密栓できるねじ式の栓を使い、これらの材質は避けます。 |
| (4) | ×(誤り) | 採る水で容器をすすぐ操作は行いません。あらかじめ溶剤で洗った容器に、すすがずそのままくみ取ります。 |
| (5) | ○(正しい) | 薄い水を大量に評価する場合には、現場で水を通しながら捕らえる方式を選ぶことも認められています。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
この物質群は水になじまず、油や固体の表面に集まる性質を持っています。水の中でも、溶けているというより濁りの粒子にくっついて漂っている割合が大きく、容器の内壁も張り付き先の一つになります。ここで採る水を使ってすすぎ、そのすすぎ水を捨てるとどうなるか。内壁に移った分と、粒子ごと流れ出た分が、測る前に失われます。しかも失われる量は水の濁り具合や作業の丁寧さで変わるため、後から補正することもできません。規格が採水の手順に、容器のすすぎは行わないという但し書きを置いているのはこのためです。
代わりに行うのが、使用前の洗浄です。容器はメタノールやアセトン、続いてトルエンやジクロロメタンといった溶剤で十分に洗い、洗浄に使った溶剤が残らないようにしたうえで現場へ持ち込みます。汚染を断つのは現場ではなく準備の段階という役割分担になっており、現場ですることは、空間を残して入れて密栓する、必要なら還元剤を加える、といった保存のための操作に絞られます。すすぎが有効なのは、相手が水によく溶けて器壁に残らない項目の場合です。相手が器壁に付くかどうかで、共洗いの是非は逆転すると整理しておくと、他の項目と混ざりません。
覚え方
- 器壁に付く相手には共洗いをしない。洗うのは現場ではなく持ち込む前、溶剤で行う。
- 容器はガラス、栓はねじ式。ゴムとコルクは有機成分が出るので使わない。
- 残留する酸化剤は還元剤で打ち消してから運ぶ。加える量は残留分に対応させる。
- 薄い水を評価するときは、現場で通水して捕らえる方式という選択肢もある。
理解度チェック
容器の汚染はどの段階で断ちますか。
現場に持ち込む前の洗浄です。溶剤で十分に洗い、その溶剤も残らないようにしてから使います。
水の中でこの物質群は主にどんな形で存在していますか。
濁りの粒子に付いた形です。水に溶けにくいため、固体の表面に集まります。採水や前処理では、この粒子を逃がさないことが要点になります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
- JIS K 0312(工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法)
※ この記事の確認日:2026年7月