平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問17を解説|内標準物質の役割と確認基準
平成30年度 ダイオキシン類特論 問17は、重い同位体で目印を付けた化合物を三つの段階に分けて加え、それぞれ何を保証させるのかを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
分析の途中でどれだけ失われたかは、目的の物質そのものを見ていても分かりません。そこで、化学的にはほとんど同じで質量だけが違う化合物をあらかじめ混ぜ、その減り方から操作の出来を逆算します。加える場所が違えば、保証できる区間も変わります。現場で加えれば運搬まで、抽出の前で加えれば前処理全体、装置に入れる直前で加えれば注入そのものが対象です。引っかけは選択肢の並びの最後に置かれていて、注入を確かめる目印について、合格とみなす面積の水準が本来より緩い数字にすり替えられています。役割の説明だけを追っていると気付けません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 炭素や塩素を重い同位体に置き換えた化合物を使います。振る舞いは目的の物質とほぼ同じでありながら質量が違うため、装置の上で別のピークとして区別できます。 |
| (2) | ○(正しい) | 採取に入る前に加える目印なので、現場での捕集から運搬を経て抽出に取りかかるまでの区間で、どれだけ失われたかを映します。 |
| (3) | ○(正しい) | 抽出に入る直前に加える目印で、精製までの前処理全体の出来を映します。濃度計算はこの目印との面積比を基準に組み立てます。 |
| (4) | ○(正しい) | 最後に加える目印は前処理を経ていないため減りようがなく、装置へ試料液が設計どおり注入されたかどうかだけを示します。 |
| (5) | ×(誤り) | 注入確認用の目印に求められる面積の水準は、標準液の6割ではなく7割です。6割まで許すと、注入量の落ち込みを見逃してしまいます。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
注入を確かめる目印は、前処理をくぐっていません。抽出でも精製でも触れられていないのですから、面積が標準液より大きく下がる理由は原則として一つ、装置に入った量が足りないことだけです。だからこの目印の面積は、装置がまともに動いているかを映す最後の関門になります。JIS K 0311では、測定用試料の中のこの目印のピーク面積が、標準液での面積の70%以上であることを確かめ、外れた場合は原因を取り除いて測り直すと定めています。
設問の数字はこれより一段緩い水準です。合格ラインを下げれば、注入不良のまま出てきた低い値を正常として通してしまうことになります。しかもこの段階の落ち込みは、他の二つの目印では検出できません。採取用の目印は前処理より前の区間、前処理用の目印は精製までの区間しか見ていないからです。三つの目印は保証する区間が重なっておらず、どれか一つの基準を緩めれば、その区間はまるごと無管理になると考えてください。役割を覚えるだけでなく、判定に使う水準まで結び付けて覚えておく必要があります。
覚え方
- 目印は加えた場所より後ろの操作しか保証しない。採取前なら運搬まで、抽出前なら精製まで、注入前なら注入だけ。
- 濃度の計算基準になるのは前処理全体を見ている目印。採取用の目印は基準にしない。
- 注入確認用の目印の面積は、標準液の70%以上が合格ライン。
- 三つの目印には互いに別の化合物を割り当てる。同じものを使うと区間の切り分けができない。
理解度チェック
濃度を求めるときの基準になる目印は、どの段階で加えたものですか。
抽出に入る直前に加えたものです。前処理全体を一緒にくぐっているため、目的の物質と同じだけ失われたとみなせます。
注入確認用の目印の面積が標準液より大きく下がったら、何を疑いますか。
装置への注入そのものです。この目印は前処理を経ていないので、抽出や精製の失敗では説明できません。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
- JIS K 0311(排ガス中のダイオキシン類の測定方法)
※ この記事の確認日:2026年7月