平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問16を解説|クロロベンゼン類の製造工程
平成30年度 ダイオキシン類特論 問16は、芳香環に塩素を導入してつくる化学品の工程を、触媒・反応剤・後処理・分離の順にたどった短い文の中から誤りを探す問題です。下線を付した箇所のうち誤っているものを選びます。
この問題のポイント
四つ目までは、反応させて、洗って、分けるという教科書どおりの流れが並んでいます。最後の一つだけが工程の説明ではなく、どこが発生源かという評価に踏み込んでいて、そこがすり替えられています。判断の軸は単純で、新しい化合物が生まれるのは反応が起きている場だけという一点です。物質を分ける操作は、すでにあるものを移し替えているにすぎません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 下線 | 語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| (1) | 鉄触媒 | 芳香環への塩素の導入は、塩素分子を活性化する鉄系の触媒を使って進めます。 |
| (2) | 塩素 | 塩素化の相手は塩素そのものです。同時に塩化水素が副生します。 |
| (3) | 水 | 粗生成物に残る酸分や触媒分を水で洗って除いてから、次の分離工程へ送ります。 |
| (4) | モノクロロベンゼン | 沸点の差を使って、未反応の原料を回収しつつ塩素が一つ入った目的物を取り出します。 |
| (5) | 蒸留工程 | ×(誤り) 主たる発生源は塩素化を行っている反応の工程です。蒸留は沸点差で分けるだけの操作です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
ダイオキシン類が生まれるには、芳香環と塩素と触媒が同じ場所で高い活性のまま出会う必要があります。その条件が完全にそろっているのは、塩素を吹き込んで環に取り込ませている反応器の中だけです。ここでは目的物のほかに、塩素が二つ以上入った副生物や、酸素を含む中間体も少しずつできてしまいます。それらが互いに結びつくことで、ダイオキシン骨格やフラン骨格が副生します。したがって発生源をたどれば行き着く先は反応の場であり、分離操作にすぎない蒸留を主たる発生源とみなすのは筋違いです。
もっとも、蒸留の周辺で高い値が検出されること自体はあり得ます。ダイオキシン類は目的物より沸点が高いため、塔の底に残る液や残渣の側に濃縮されて集まるからです。しかしそれは、すでにできていたものが一か所に集められた結果であって、そこで新たに生まれたことを意味しません。濃度が高い場所と、生成している場所を同一視するのがこの設問の落とし穴で、対策の打ち方もまったく変わってきます。生成そのものを抑えたいなら反応条件を見直し、外部への流出を抑えたいなら残渣の管理を固める、という具合に対応が分かれます。
覚え方
- つくる場は反応工程、分ける場は蒸留工程。発生源を問われたら反応側。
- 生成に要るのは芳香環と塩素と触媒。三つがそろう場所を探す。
- ダイオキシン類は沸点が高い。蒸留残渣や塔底に濃縮されやすい。
- 濃度が高い場所と生まれた場所は別物。濃縮と生成を混同しない。
- 芳香環の塩素化には鉄系の触媒。副生するのは塩化水素。
理解度チェック
クロロベンゼン類の製造で、ダイオキシン類の主たる発生源はどこですか。
塩素化を行う反応の工程です。芳香環と塩素と触媒がそろい、副生物どうしが結びつく条件が整っています。
蒸留残渣からダイオキシン類が高い濃度で見つかるのはなぜですか。
沸点が高く、塔の底側に濃縮されるからです。そこで生成しているのではなく、集まってきた結果です。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月