平成30年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問14を解説|排水処理と粒子の分離
平成30年度 ダイオキシン類特論 問14は、工場から出る水の中でダイオキシン類がどんな姿で存在し、どの操作でどこまで取り除けるのかを問う正誤問題です。誤っている記述を選びます。
この問題のポイント
ここに並ぶ操作は、重力で落とす、ろ材で受け止める、膜でふるい分ける、微生物に食べさせるという四通りの原理に分かれます。それぞれに得意な相手の大きさがあり、境目を外れると途端に効かなくなるのが共通の性質です。引っかけの核心は重力に頼る分離の下限で、時間さえかければどんなに小さな粒でも沈むはずだ、という直感が裏切られる点にあります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 水に溶けにくい性質が強いため、水に溶けた形ではなく浮遊する微粒子に付着した形で運ばれます。 |
| (2) | ×(誤り) | 1 µm以下の粒子は沈む速さが極端に小さく、水の動きや熱運動に押し戻されるため、重力だけでは分けられません。 |
| (3) | ○(正しい) | ろ材の隙間に引っかけ、あるいは表面に付着させて捕らえる操作なので、互いにくっつかない微小粒子は通り抜けます。 |
| (4) | ○(正しい) | 膜を使う方法は通す穴の細かさで段階分けされ、粗いものから細かいものへと並びます。 |
| (5) | ○(正しい) | 微生物のはたらきで有機物を酸化し、二酸化炭素と水、そして菌体へと変えていく処理です。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
水中で粒が沈む速さは、粒の直径の2乗に比例します。つまり直径が10分の1になれば沈降速度は100分の1、100分の1になれば1万分の1です。1 µmを下回る粒になると、沈むのに必要な時間は現実の処理槽で確保できる滞留時間を大きく超えてしまいます。さらにこの大きさでは、水分子の衝突による不規則な動きや、槽内のわずかな流れ・温度差による対流のほうが沈降より優勢になり、粒はいつまでも漂ったままです。したがって重力沈降だけで1 µm以下の粒子まで分離できるという記述は成り立ちません。
この壁を越える手立てが凝集です。薬剤で粒子どうしの反発を打ち消し、集まって大きな塊にしてしまえば、沈降速度は粒径の2乗で一気に取り戻せます。そのうえで沈降分離やろ過にかける、という順番になります。膜を使う方法は凝集を経ずに細かい粒子を止められますが、目詰まりと動力の負担が代わりに増えます。操作を選ぶ順序を粒の大きさから考えず、装置の名前だけで覚えると、この種の設問で足をすくわれます。
ダイオキシン類の処理という文脈では、この理解が特に効きます。水に溶けにくい性質から、その大部分は粒子にくっついた形で存在するので、粒子を確実に取り去る操作がそのまま濃度の低減につながります。逆に、細かい粒子を取り残せば、そこに乗ったダイオキシン類も一緒に流出することになります。
覚え方
- 沈降速度は粒径の2乗に比例。径が10分の1なら速さは100分の1。
- 1 µm以下は重力では落ちない。凝集で大きくしてから沈める。
- ろ材で捕らえる操作は、くっつく性質のない粒には効かない。
- 膜は穴の細かさで三段。粗い順に精密ろ過、限外ろ過、逆浸透。
- 水に溶けにくい物質の除去は、固体を取り去る操作が主役になる。
理解度チェック
1 µm以下の粒子が重力沈降で分離できないのはなぜですか。
沈降速度が粒径の2乗で小さくなるからです。熱運動や槽内の流れのほうが優勢になり、粒は漂い続けます。
排水中のダイオキシン類は、主にどんな形で存在していますか。
懸濁した粒子に付着した形です。水に溶けにくいため、固体を取り除く操作が濃度低減の中心になります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月