平成30年度 公害防止管理者 大規模大気特論 問8を解説|石炭火力発電所の排煙処理システム(増えているのは低温形の電気集じん装置)
平成30年度 大規模大気特論 問8は、石炭をたく発電設備で排ガスをきれいにする装置の組み合わせについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
石炭をたくと、灰の粒子・硫黄酸化物・窒素酸化物がまとめて出てきます。そのためボイラの後ろには、粒子を捕まえる装置、窒素酸化物を落とす装置、硫黄酸化物を落とす装置、そして煙突へ送る前に排ガスを温め直す装置が並びます。四つの記述はこの定番の並びをなぞったもので、迷う余地はほとんどありません。分かれ目は、粒子を捕まえる装置をどの温度域に置く形が近年増えているのかという一点で、そこだけが逆向きに書き換えられています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 大量の排ガスを低い圧力損失で処理でき、細かい灰も高い効率で捕まえられるため、集じんは電気集じん装置が主役です。 |
| (2) | ○(正しい) | 脱硝は、アンモニアを吹き込んで触媒の上で窒素酸化物を還元する選択的触媒還元法(SCR法)が主流です。 |
| (3) | ○(正しい) | 脱硫は、石灰石のスラリーで硫黄酸化物を吸収し石こうとして回収する湿式石灰石こう法が主流です。 |
| (4) | ○(正しい) | 湿式脱硫を出た排ガスは冷えて水分に富むため、熱交換器で温め直すと煙突から出る白煙を抑えられます。 |
| (5) | ×(誤り) | 採用が増えているのは高温形ではなく低温形(低低温形)の電気集じん装置です。これが正解です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
電気集じん装置は、放電で帯電させた粒子を電極に引き寄せて集めます。このとき効きを左右するのがダストの電気抵抗率です。抵抗率が高すぎると、電極に着いた層から電荷が逃げず、層の中で放電が起きて捕まえた粒子をはね返してしまいます。抵抗率が低すぎれば、逆に電極に着いたそばから電荷を失って再び飛び散ります。石炭灰は抵抗率が高くなりやすい側にあり、そのままでは効率が伸びません。
そこで近年広く採られているのが、排ガスをより低い温度域まで下げてから集じんする低温形(低低温形)電気集じん装置です。温度を下げると排ガス中の水分や硫黄酸化物由来の成分がダストの表面に付き、電気を通しやすくなって抵抗率が扱いやすい範囲に収まります。ガスの体積そのものも縮むので装置を小さくでき、硫黄酸化物の一部を集じん段階で取り込めるため後ろの装置や煙突への負担も軽くなります。「高温形の採用が増えている」という記述は、この流れをそっくり逆さまにしたもので、ここが誤りです。
高温形は、逆に温度を上げる側で抵抗率が下がる領域を使う考え方で、脱硝装置の前に置ける利点があり過去には採用されました。ただし高温のぶんガスの体積が大きく装置も大きくなります。低温側で処理する場合の注意点は、下げすぎると排ガス中の硫黄酸化物が結露して低温腐食を招くことで、酸露点との関係をにらんだ温度管理が前提になります。「低いほど良い」ではなく「ちょうどよい低さに合わせる」設計だと理解しておくと、他の年度で温度域を入れ替えた肢が出ても迷いません。
覚え方
- 石炭火力の排煙処理の基本形は、電気集じん→脱硝(SCR法)→脱硫(湿式石灰石こう法)→熱交換器で再加熱。
- 近年増えているのは低温形(低低温形)の電気集じん装置。「高温形が増加」と書いてあったら逆さま。
- 電気集じんの効きを決めるのはダストの電気抵抗率。高すぎても低すぎても捕まえにくい。
- 温度を下げるねらいは、抵抗率を下げる・ガス体積を縮める・硫黄酸化物を取り込む。下げすぎは低温腐食。
- 煙突の白煙対策は熱交換器での再加熱。脱硫の後で冷えて湿った排ガスを温め直す。
理解度チェック
石炭火力の高性能な排煙処理システムで採用が増えているのは、高温形と低温形のどちらの電気集じん装置か。
低温形(低低温形)です。排ガスを低い温度域まで下げてから集じんすることで、ダストの電気抵抗率が扱いやすい範囲に収まり、ガスの体積も縮んで装置を小型にできます。
湿式脱硫の後で排ガスを熱交換器にかけるのは何のためか。
白煙対策のためです。湿式脱硫を出た排ガスは温度が低く水分を多く含むため、そのまま出すと煙突の先で水滴になって白く見えます。再加熱してから放出すると白煙が出にくくなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月