平成30年度 公害防止管理者 大規模大気特論 問3を解説|強い逓減分布は熱的に不安定
平成30年度 大規模大気特論 問3は、気温の鉛直分布と大気安定度の関係についての記述中、下線を付した箇所のうち誤っているものを選ぶ問題です。
この問題のポイント
この問題は、持ち上げた気塊が周囲より軽くなるか重くなるかで安定度が決まる、という判定のしかたを問うています。引っかけの核心は判定の結論だけがひっくり返されている点で、そこに至るまでの説明はすべて正しく書かれています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている箇所)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 上空へ行くほど気温が下がる分布を逓減分布といいます。正しい記述です。 |
| (2) | ○(正しい) | 持ち上げられた気塊は、周囲と熱をやり取りせずに乾燥断熱減率に従って冷えます。正しい記述です。 |
| (3) | ○(正しい) | 周囲の気温の下がり方のほうが急なので、上昇した気塊は周囲より温度が高くなります。正しい記述です。 |
| (4) | ×(誤り) | 周囲より高温=軽いので、気塊はさらに上昇します。この状態は熱的に不安定であり、「安定」とするのは誤りです。 |
| (5) | ○(正しい) | 上空へ行くほど気温が高くなる分布を逆転分布といいます。正しい記述です。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
大気安定度の判定は、気塊を少し持ち上げてみて、その後どうなるかで決めます。持ち上げられた気塊は乾燥断熱減率に従って冷えますが、周囲の気温の下がり方(逓減)がそれより急だと、気塊のほうが周囲より温かく、したがって軽い状態になります。軽ければ浮力でさらに上へ動くので、最初のずれが自分で広がっていきます。これは安定ではなく不安定です。
逆に下向きへずらしたときも同じことが起きます。設問が「P0からP2へ移動すると逆方向の変化が生じる」と書いているとおり、下げた気塊は周囲より冷たく重くなってさらに沈みます。上へずらせば上へ、下へずらせば下へ動き続けるのが不安定の姿です。
安定・不安定の分かれ目は、周囲の気温減率が乾燥断熱減率より急か緩やかかの一点にあります。緩やかであれば持ち上げた気塊は周囲より冷たくなって元に戻ろうとし、これが安定。逆転分布はその極端な形で、上空ほど暖かいため煙が上へも下へも広がれず、汚染物質が滞留します。
覚え方
- 判定は持ち上げた気塊が周囲より軽いか重いか。軽ければ不安定、重ければ安定。
- 周囲の気温減率が乾燥断熱減率より急なら不安定、緩やかなら安定。急=強い逓減分布。
- 逆転分布は安定の極端形。上空ほど暖かく、煙が広がれずに滞留する。
- 不安定は「ずれが自分で広がる」、安定は「ずれが元に戻る」。結論の語だけを入れ替える出題に注意。
理解度チェック
強い逓減分布のとき、大気は熱的に安定ですか、不安定ですか。
不安定です。持ち上げられた気塊は乾燥断熱減率で冷えますが、周囲はそれより急に冷えているため気塊のほうが高温・軽量になり、さらに上昇します。
逆転分布とはどのような状態で、汚染物質にどう影響しますか。
上空へ行くほど気温が高くなる状態です。持ち上げた気塊が周囲より冷たく重くなるため上下方向に動けず、汚染物質が拡散せずに滞留します。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月