平成30年度 公害防止管理者 大規模大気特論 問2を解説|煙突風下の最大着地濃度
平成30年度 大規模大気特論 問2は、起伏のない土地で煙突から出た煙が地表につくる濃度の山が、条件によってどちら向きに動くかを扱った正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
煙突を出た煙は風に流されながら上下と左右に広がり、やがて地表に届きます。地表の濃度は煙源のすぐ足元ではほとんどゼロで、風下のある距離でいちばん高くなり、その先はまた下がっていきます。問われているのは、この山のてっぺんの高さが日射・安定度・煙突の高さ・風速でどちらに動くか、という向きの判断だけです。引っかけの核心は、「広がる=薄まる」という感覚を鉛直方向にもそのまま当てはめさせる点にあります。上下に広がりやすいということは、上空を流れていた煙がそれだけ早く地面まで下りてくるということでもあり、地表で受け取る濃度の山はむしろ高くなります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 日射が強いほど地面が暖まって大気は不安定な側に傾き、煙が地表へ下りやすくなります。大きくなるという向きで正しい記述です。 |
| (2) | ×(誤り) | 鉛直方向に広がりやすいと煙は早く地上に届くため、最大着地濃度は大きくなります。小さくなるとするのは向きが逆です。 |
| (3) | ○(正しい) | 有効煙突高さが増せば、煙が地表に届くまでに広がる余地が増えます。着地濃度が小さくなるという向きで正しい記述です。 |
| (4) | ○(正しい) | 中立から不安定へ変わるのは鉛直の混ざり方が強まる向きです。最大着地濃度が大きくなるという説明で正しい記述です。 |
| (5) | ○(正しい) | 風速が増すと薄める働きが強まる一方、煙の上昇高さは下がります。相反する二つが働くので、小さくも大きくもなり得ます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
拡散幅というのは、煙の断面がどれだけ太くなったかを表す量です。左右方向に太くなることは、同じ量の汚染物質をより広い幅にならすことなので、濃度を下げる方向にしか働きません。ところが上下方向は事情が違います。煙は地表からある高さを流れているので、上下に太らないうちは地表にほとんど届かないからです。
つまり鉛直方向の広がりは、薄める働きと地表まで届ける働きの二役を持っています。そして地表の濃度がいちばん高くなる場所というのは、煙の裾がちょうど地面に触れて折り返し始めたあたりです。鉛直に広がりやすい条件では、この「触れ始め」がまだ煙が濃いうちに、しかも煙源に近いところで起こります。結果として、鉛直拡散幅が増すほど最大着地濃度は大きくなり、そのピークの位置も煙突に近づきます。選択肢は小さくなるとしており、向きが逆です。
この向きは、ほかの選択肢とも辻褄が合っています。日射が強いとき、あるいは中立から不安定に変わったときは、いずれも鉛直方向の混ざりが活発になる場面です。そこで最大着地濃度が大きくなるとされている以上、鉛直拡散幅が増したときだけ小さくなるというのは筋が通りません。逆に、左右の広がりが大きい条件や有効煙突高さが高い条件は、素直に濃度を下げる向きに働きます。
覚え方
- 横に広がるのは薄めるだけ。上下に広がるのは、薄めると同時に煙を地面まで連れてくる。
- 鉛直拡散幅が増す=最大着地濃度は大きくなり、ピークは煙突に近づく。
- 日射が強い・中立から不安定へ、はどちらも「上下によく混ざる」側。着地濃度は大きくなる。
- 有効煙突高さが増す=地表に届くまでの猶予が増える。着地濃度は小さくなる。
- 風速だけは一方向に決まらない。薄める働きと、上昇高さを削る働きが逆を向くため。
理解度チェック
煙の鉛直拡散幅が大きくなると、最大着地濃度はどうなるか。
大きくなります。上下に広がりやすいということは、上空を流れていた煙が濃いうちに地表へ届くということだからです。ピークの位置も煙突寄りに移ります。
風速が増したとき、最大着地濃度が一方向に決まらないのはなぜか。
風が強いほど煙は薄められますが、同時に煙が持ち上がる高さが抑えられて有効煙突高さが低くなるからです。薄める働きと低く抑える働きが逆を向くため、条件によって小さくも大きくもなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月