平成30年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問5を解説|塩化水素の処理と吸収装置
平成30年度 大気有害物質特論 問5は、排ガス中の塩化水素を水に吸収させて処理するときの装置の選び方に関する穴埋め(組合せ)問題です。ア~ウに入る語句の正しい組合せを選びます。
この問題のポイント
塩化水素は水に非常によく溶けるガスで、溶けるときにまとまった熱を出します。したがって装置選びの軸は接触面積だけではなく、出てくる熱をどこまで捨てられるかになります。濃度が高いほど単位時間あたりの発熱が大きくなるので、熱を逃がしやすい構造かどうかで形式が入れ替わる、という一点を押さえれば空欄は続けて決まります。空欄アを取り違えると、以降の装置選びの理屈がすべて成り立たなくなる作りになっています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)
空欄に入る正しい語句
| 空欄 | 入る語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | 大きく | 塩化水素は水に溶けるときにまとまった熱を出します。溶解熱が大きいからこそ、装置側に除熱の工夫が要るという話につながります。 |
| イ | ぬれ壁塔 | 濃度が高いと発熱量が大きくなります。管の内壁に液を膜状に流す構造なら、管の外側から冷やして熱を抜けます。 |
| ウ | 充塡塔 | 濃度が低ければ発熱は問題になりません。除熱より接触面積を優先し、充塡物で気液を広く触れさせる形式が使えます。 |
ここが分かれ目
取り違えやすいのは空欄アです。塩化水素は水に極めてよく溶けるガスで、溶解熱も大きい側に入ります。ここを「小さく」と読んでしまうと、続く文が装置を使い分ける理由を失います。発熱が小さいなら、濃度が高かろうが低かろうが同じ形式で構わないはずだからです。濃度によって装置を変えると書かれている時点で、原因は熱にあると読むのが定石です。
そのうえで、二つの装置の性格を熱の観点から比べます。ぬれ壁塔は垂直な管の内壁に液を膜状に流し、中心を通るガスと接触させる形式です。液が金属の壁に沿って薄く流れるので、管の外側を冷却水で冷やせば発生した熱をそのまま逃がせます。塩化水素濃度が高く、吸収に伴う発熱が大きい場面ではこの構造が効きます。
一方の充塡塔は、リングなどの充塡物を詰めて表面に液を流し、広い接触面積を稼ぐ形式です。接触面積を確保する点では優れますが、塔の中心部で出た熱を外へ抜く経路がありません。したがって発熱の大きい高濃度の条件では液温が上がり、かえって吸収が進みにくくなるおそれがあります。塩化水素濃度が低く発熱が小さい条件でこそ、この形式の利点が生きます。
まとめると、濃度が高いときは除熱を優先してぬれ壁塔、低いときは接触面積を優先して充塡塔という順序になります。この向きを逆に覚えると、選択肢のどれとも合わなくなるので注意が必要です。
覚え方
- 濃度によって装置を変える設問は、たいてい発熱をどう捨てるかが背後にある。
- よく溶けるガスは溶けるときに熱を出す。塩化水素は溶解熱が大きい側。
- ぬれ壁塔=壁面を冷やして除熱できる構造。高濃度・高発熱の条件向け。
- 充塡塔=接触面積を稼ぐ構造。除熱は苦手なので低濃度の条件向け。
- 液温が上がると溶解度は下がる。冷やせない装置に高濃度ガスを入れない、と結びつける。
理解度チェック
塩化水素濃度が高いガスの吸収に、ぬれ壁塔が用いられるのはなぜか。
塩化水素の水に対する溶解熱が大きいため、高濃度では発熱が大きくなるからです。ぬれ壁塔は管の内壁に液を膜状に流す構造で、管の外側から冷やして熱を逃がせます。
塩化水素濃度が低いガスには、どの吸収装置が用いられるか。
充塡塔です。発熱が小さく除熱を優先する必要がないため、充塡物で気液の接触面積を大きく稼ぐ形式が適します。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月