平成29年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問5を解説|活性炭によるガス吸着(無極性の相手を好む)
平成29年度 大気有害物質特論 問5は、活性炭で有害ガスを捕らえる処理の性質を並べた正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
活性炭の表面は炭素そのものでできていて、水になじむような電気的な偏りをほとんど持ちません。だからこそ、同じように偏りの小さい分子とよく引き合います。この一点を押さえていれば、得意な相手と苦手な相手はすぐ判別できます。引っかけの核心は得意な相手の向きを反転させたところにあり、正しい説明と語順まで似ているぶん見落としやすくなっています。残りの肢は、賦活の種類、添着炭の使い分け、交換時期の目安という、運用側の常識を並べたものです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 得意な相手を電気的な偏りをもつ分子の側だと述べており、向きが逆です。活性炭の表面は偏りが小さく、水になじみにくい分子をよく捕らえます。 |
| (2) | ○(正しい) | 同じ系列の炭化水素なら、炭素の数が多いものほど沸点が高く、表面に留まりやすくなります。正しい記述です。 |
| (3) | ○(正しい) | 水蒸気などで細孔を開かせた炭が気相用の主流で、排ガス処理や溶剤の回収に使われます。正しい記述です。 |
| (4) | ○(正しい) | 塩基性のガスには酸性の成分を担持させた炭を当てるという、中和の考え方どおりの組合せです。正しい記述です。 |
| (5) | ○(正しい) | 出口濃度が立ち上がるまでの時間が分かれば、いつ入れ替えるかを決められます。正しい記述です。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
吸着では、表面と分子のあいだに働く弱い引力がものを言います。活性炭の表面はほぼ炭素で覆われていて、電荷の偏りが小さい、いわば無極性の面です。似た者どうしが引き合う道理で、この面が捕まえやすいのは、やはり偏りの小さい分子、つまり水になじみにくい有機物のほうになります。有機溶剤を回収する用途で活性炭が選ばれるのは、この相性によるものです。
選択肢(1)は、この関係を裏返して偏りをもつ分子のほうを得意とすると述べています。もしそのとおりなら、大気中にいくらでもある水蒸気が真っ先に細孔を埋めてしまい、目的の有機物を捕らえる余地がなくなります。湿った排ガスでも有機物を捕らえられるという活性炭の使い勝手そのものと矛盾すると考えれば、その場で切れます。偏りの大きい分子を狙うなら、表面に水酸基を持つシリカゲルや、細孔の中に電荷を抱えるゼオライトの出番です。
なお、活性炭が水になじみにくい相手を好むという性格は、選択肢(4)の添着炭とも地続きです。素の活性炭ではつかまえにくいアンモニアのような分子は、あらかじめ表面に酸性の成分を担持させ、化学的に固定して捕らえます。物理的な引力で捕らえるのが基本、届かない相手は化学反応で捕らえるという二段構えです。
覚え方
- 活性炭の表面は無極性=水になじまない相手を好む。極性の高い分子はシリカゲルやゼオライトの担当。
- 同じ系列なら、炭素数が多く沸点が高いものほど吸着されやすい。
- 賦活はガス賦活と薬品賦活。気相の排ガス処理・溶剤回収はガス賦活炭。
- 添着炭は「相手が塩基性なら酸を、酸性なら塩基を」担持させる中和の発想。
- 出口濃度が立ち上がる時間=破過時間が、交換や再生の計画の基礎になる。
理解度チェック
活性炭が得意とするのは、どんな性質の物質か。
電気的な偏りが小さい無極性の物質、つまり水になじみにくい有機物です。活性炭の表面自体が無極性なので、似た性質の分子と引き合います。
アンモニアのような塩基性ガスを活性炭で捕らえるには、どうするか。
表面に酸性の成分を担持させた添着炭を使います。物理的な引力だけでは捕らえにくい相手を、化学的に固定して除きます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月