平成29年度 公害防止管理者 大気特論 問10を解説|窒素酸化物の生成機構(プロンプトNOxの引き金)
平成29年度 大気特論 問10は、燃焼のなかでNOxがどんな道筋で生まれるかを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
NOxの出どころは、高温の空気に含まれる窒素から来るもの、燃料そのものに含まれる窒素分から来るもの、そして火炎の先端でごく短時間のうちにできるものの三つに整理できます。この問題は、その三つの名前と成り立ちを結びつけられているかを確かめる作りです。分かれ目は三つ目の道筋が成立するために何が必要かで、その必要条件を持たない燃料を持ち出した肢が一つ紛れています。名前だけを覚えていると素通りしてしまいます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 高温で空気中の窒素と酸素からNOができる連鎖反応を説明するもので、サーマルNOxを代表する機構です。 |
| (2) | ○(正しい) | 火炎前縁で速やかに生じるNOxも、もとをたどれば空気中の窒素が起源で、サーマルNOxに伴って現れる現象として扱われます。 |
| (3) | ×(誤り) | 炭素を含まない燃料では、この速やかな生成の引き金となるラジカルができません。これが正解です。 |
| (4) | ○(正しい) | 石炭中の窒素分はシアン化水素などの中間生成物を経てNOへ向かうため、火炎中にシアン化合物が存在します。 |
| (5) | ○(正しい) | 燃料中の窒素はすべてがNOになるわけではなく、途中で窒素分子へ抜ける分があるため変換率は高くなりきりません。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
火炎の先端で速やかに生じるNOxは、燃料が分解してできた炭化水素系のラジカルが空気中の窒素分子に切り込むところから始まります。頑丈な窒素分子の三重結合は、ふつうなら高温でじりじりと切れていくものですが、このラジカルが相手だと火炎前縁のごく短い時間でシアン化水素などに姿を変え、そこから一気にNOへ進みます。出発点が炭化水素なのですから、炭素をまったく含まない燃料でこの道筋が働くという記述は成り立ちません。水素を燃やしたときに出るNOxは、高温で窒素と酸素が結びつく道筋によるものが主体です。
もう一方の道筋である高温由来の生成は、温度への効き方が非常に強いのが特徴です。火炎温度が上がるほど、酸素が多く残っているほど、そして高温域にとどまる時間が長いほどNOは増えます。低空気比燃焼や二段燃焼、排ガス再循環といった抑制策が、どれも温度を下げるか酸素を薄めるか滞留時間を縮めるかのいずれかを狙っているのは、この三つの因子に直接効かせるためです。燃料の種類にかかわらず高温さえあれば生じるのがこの道筋で、逆に言えば燃料組成で説明しようとすると読み違えます。
三つ目の、燃料中の窒素分に由来する生成では、窒素分がまずシアン化水素やアンモニアといった中間の形になり、その周囲に酸素があればNOへ、酸素が乏しければ互いに結びついて窒素分子へと分かれていきます。行き先が二手に分かれるからこそ、燃料中の窒素がまるごとNOに変わることはなく、変換率は上限まで届きません。この分岐は抑制の考え方にも直結していて、中間生成物ができる場所をあえて酸素の薄い雰囲気にしておけば、NOではなく窒素分子の側へ流れを傾けられます。
覚え方
- 火炎前縁で速く生じるNOxの引き金は炭化水素ラジカル。炭素のない燃料では生じない。
- 高温由来の生成を決めるのは、温度・酸素濃度・高温域の滞留時間の三つ。
- 石炭の火炎中にシアン化合物あり。燃料中の窒素がNOへ向かう途中の姿。
- 燃料中の窒素は、酸素があればNO、乏しければ窒素分子へ。だから変換率は上限に届かない。
理解度チェック
火炎前縁で速やかに生じるNOxは、何をきっかけに生成するか。
燃料が分解してできた炭化水素系のラジカルが空気中の窒素分子に働きかけることがきっかけです。そのため、炭素を含まない燃料では生成しません。
燃料中の窒素分がすべてNOにならないのはなぜか。
中間生成物からの行き先が二手に分かれるためです。周囲に酸素があればNOへ進みますが、酸素が乏しい雰囲気では窒素分子へ抜けていきます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大気特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月