平成29年度 公害防止管理者 大気特論 問9を解説|水酸化マグネシウムスラリー吸収法(吸収剤は石灰石より高い)
平成29年度 大気特論 問9は、マグネシウム系のアルカリを吸収剤に使う湿式の排煙脱硫について、下線を付した箇所のうち誤っているものを選ぶ問題です。
この問題のポイント
吸収剤を石灰石からマグネシウム系に取り替えると何が変わるのかを、五つの側面から確かめる問題です。液性、取り扱い上の安全性、値段、できあがる塩の性質、装置内に固まりが付くかどうか。このうち四つはこの方式の売り文句にあたり、素直に読めばそのまま通ります。仕込まれているのは値段の大小で、扱いやすい薬剤ほど安いはずだという思い込みを突く形になっています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている箇所)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | この吸収剤の液性は弱いアルカリ性で、強アルカリを扱うときのような危険を伴いません。 |
| (2) | ○(正しい) | 毒性も金属を侵す性質もほとんどなく、設備にも作業者にも負担の小さい薬剤です。 |
| (3) | ×(誤り) | 石灰石との値段の大小が逆で、マグネシウム系の吸収剤のほうが高くつきます。これが正解です。 |
| (4) | ○(正しい) | 硫黄分を吸収してできるマグネシウムの塩は、水によく溶ける性質を持ちます。 |
| (5) | ○(正しい) | よく溶けるので固体として析出しにくく、塔内に硬い付着物ができる心配が小さくなります。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
石灰石は、天然に大量に産出する鉱物を砕いてそのまま使える、脱硫剤としては最も安い部類の材料です。一方でマグネシウム系のアルカリは、海水やかん水からいくつもの工程を経て取り出す製品ですから、同じ量の硫黄分を捕まえるのに必要な薬剤費で比べれば分が悪くなります。石灰石よりも安いという値段の向きが、この問題で唯一ひっくり返されている点です。
では、なぜ高い薬剤をわざわざ使うのか。答えは装置を止めずに回し続けられるかどうかにあります。硫黄分を吸収したあとにできる塩がよく溶けるということは、液の中に溶けたまま系外へ運び出せるということです。塔の内壁や充填物、ノズルの出口に硬い付着物が育たないので、詰まりを取るために運転を止める回数が減ります。薬剤費の不利を、運転の安定と保守の軽さで取り返すという位置づけの方式だと理解しておくと、選択肢の並びが一本の筋で読めます。
比較の相手になる石灰石を使う方式では、生成する塩が水に溶けにくいため、事情が反対になります。溶けきれない分が固体として析出し、装置の内側に付着していくので、液の濃度管理や種結晶の扱いといった対策が要ります。その代わり、取り出した固体はそのまま製品として使える利点があります。溶けやすい塩ができる方式は付着物に強く、溶けにくい塩ができる方式は副産物を取り出せるという対比で押さえると、どちらの方式を問われても軸がぶれません。なお、溶けたまま出ていく塩は最後に排水として扱うことになるため、水側の処理まで含めて設計する必要があります。
覚え方
- 吸収剤の値段は石灰石が最も安い部類。ほかの薬剤を安いと書いた肢は疑う。
- 生成する塩が溶けやすい方式=付着物に強い。溶けにくい方式=付着物対策が要る。
- 弱アルカリ性・低毒性・金属を侵しにくい、は取り扱いの話。値段の話とは切り離す。
- 薬剤費で不利な方式は、たいてい運転の手間の少なさで選ばれている。
理解度チェック
マグネシウム系の吸収剤と石灰石では、薬剤としてどちらが安いか。
石灰石です。天然に大量に産出する鉱物を砕いて使えるためで、マグネシウム系のアルカリのほうが高くつきます。
この方式で塔内に硬い付着物ができにくいのはなぜか。
硫黄分を吸収してできる塩の溶解度が大きいためです。液に溶けたまま系外へ運び出せるので、固体として析出しにくくなります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大気特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月