平成28年度 公害防止管理者 大気特論 問4を解説|SO2濃度から2つの油の混ぜ方を逆算する
平成28年度 大気特論 問4は、燃やしたあとの排ガスに現れたSO2の濃度から、2種類の油をどんな割合で混ぜていたかを逆算する計算問題です。5つの比から正しいものを選びます。
この問題のポイント
濃度は「硫黄から生まれたSO2の量」を「水分を除いた排ガスの量」で割った値です。この2つのうち、分子は混ぜ方で大きく動きますが、分母はほとんど動きません。2つの油は炭素と水素の割合がごく近く、燃やしたときに生じるガスの量が混ぜ方でほぼ変わらないからです。分母を先に1つの数として押さえてしまえば、あとは硫黄の量を逆算するだけの一次式になります。引っかけの核心は、分母に水蒸気を入れてしまうことです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(A:B = 3:2)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | × | 硫黄を含む側が半分を占め、濃度は570 ppm前後まで上がります。示された値より高すぎます。 |
| (2) | ○ | 3:2。硫黄を含む側が全体の0.4を占め、濃度はちょうど示された値になります。これが正解です。 |
| (3) | × | 硫黄を含む側が3分の1に減り、濃度は380 ppm前後まで下がります。 |
| (4) | × | 硫黄を含む側が4分の1になり、濃度は280 ppm台まで下がります。 |
| (5) | × | 硫黄を含む側が5分の1で、濃度は230 ppm前後。5つの中で最も低くなります。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 基準を決める | 混ぜたあとの油1 kgで考える。硫黄を含む側の質量を b kg、含まない側を (1−b) kg とする。 |
| 手順2 理論酸素量 | 炭素分÷12 + 水素分÷4 + 硫黄分÷32[kmol]。2つの油は炭素と水素の割合がほぼ同じなので、b がどこにあっても約0.1006 kmolでほとんど動かない。 |
| 手順3 乾きガス量 | CO2(炭素分÷12)+ SO2(硫黄分÷32)+ 窒素(0.79×1.2×理論酸素量÷0.21)+ 余った酸素(0.2×理論酸素量)を足すと約0.548 kmol。これも b でほぼ動かない。 |
| 手順4 濃度の式を立てる | SO2の物質量 ÷ 0.548 = 456×10−6。分母が定数になったので一次式で解ける。 |
| 手順5 硫黄の量を逆算 | SO2の物質量=0.548×456×10−6≒2.5×10−4 kmol。32を掛けて硫黄の質量は0.008 kg。 |
| 手順6 混ぜ方を出す | 硫黄を含む側は硫黄を2質量%含むので、0.008÷0.02=0.4 kg。残る0.6 kgがもう一方。0.6:0.4 = 3:2。 |
ここが分かれ目
最大の分かれ目は分母です。示された濃度は水分を除いたガスを分母にした値なので、燃焼で生じた水蒸気は勘定に入れてはいけません。この燃料の場合、水蒸気は乾いたガスの1割ほどに相当します。うっかり足してしまうと分母が1割ほど大きくなり、同じ濃度を満たすには硫黄をもっと増やさなければならなくなります。硫黄を含む側の比率が実際より高い側へ引っ張られ、答えが隣の選択肢へずれます。
次の分かれ目は、空気比を反映し忘れることです。余分に送った空気は燃えずにそのまま排ガスへ抜けるので、窒素も酸素も分母を押し上げます。理論空気量のまま計算すると分母が小さくなり、濃度が高く出ます。濃度を問う設問で空気比が与えられていたら、それは必ず分母に効くという合図です。
逆に言えば、この設問の設計は非常に親切です。2つの油の炭素と水素はごくわずかしか違わないので、分母は混ぜ方によらずほぼ一定とみなせます。つまり濃度は硫黄の量にほぼ比例します。硫黄を含む側の比率を2倍にすれば濃度もほぼ2倍、という感覚を持っていれば、細かく解く前に答えの見当がつきます。
覚え方
- 排ガス中の濃度は出てきた物質量 ÷ 乾きガスの物質量。分子と分母を別々に押さえる。
- 乾きガス=二酸化炭素+SO2+窒素+余った酸素。水蒸気は入れない。
- 空気比は分母を押し上げる。空気比が与えられたら必ず分母に効くと読む。
- 硫黄1 kmolからSO2が1 kmol。硫黄の質量は32で割れば物質量になる。
- 組成の近い燃料どうしの混合なら、分母は混ぜ方でほとんど動かない。濃度は硫黄の量にほぼ比例する。
理解度チェック
乾きガスを分母にすべきところで水蒸気まで足すと、求めた混合比はどちらへずれるか。
硫黄を含む燃料を多く見積もる側へずれます。分母が大きくなるぶん濃度が下がるので、同じ濃度を満たすには硫黄をもっと入れる必要がある、という計算になるためです。
余分な空気を見込まず、理論空気量ちょうどで計算すると、SO2濃度はどうなるか。
実際より高く出ます。余分に送った空気の窒素と酸素が分母から抜け落ちるためです。空気比を上げるほどガス量が増え、同じ量のSO2でも濃度は薄まります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成28年度 公害防止管理者等国家試験 大気特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月