平成30年度 公害防止管理者 大気概論 問9を解説|大気汚染の人に対する影響(生涯リスクレベルは10万分の1)
平成30年度 大気概論 問9は、大気汚染の人に対する影響に関する正誤問題です。誤っている記述を選びます。
この問題のポイント
汚染物質の有害性がどう決まり、暴露量をどう表し、影響をどう分類し、基準づくりでどの指標を使うか。毒性学の入口にあたる用語を一巡する出題です。前半の四つは定義どおりの説明で、読み飛ばしても引っかかる要素は多くありません。分かれ目は最後の一つで、影響に閾値がない物質について我が国が目標としているリスクの水準を、桁ごと正しく記憶しているかどうかが問われます。数字の一桁違いが正誤を決める、暗記の精度が試される肢です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 有害か無害かは、物質の物理的・化学的性状、暴露量、暴露される生体側の条件という三つの要因で決まります。 |
| (2) | ○(正しい) | 暴露量は、環境中の濃度と暴露時間の積として表されるのが一般的です。 |
| (3) | ○(正しい) | 健康への影響は、機能障害・疾病・死亡といった段階に分類して整理されます。 |
| (4) | ○(正しい) | 健康への有害な影響が現れない最大の暴露量を無毒性量(NOAEL)と呼び、基準値算出の出発点になります。 |
| (5) | ×(誤り) | 我が国が目標としている生涯リスクレベルは10万分の1であり、100万分の1とする点が誤りです。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
発がん性のように影響に閾値がないと考えられる物質では、どれほど濃度を下げてもリスクが完全にゼロになるとは想定しません。そこで「これ以下なら実質的に安全とみなす」という水準をあらかじめ決め、その水準に対応する濃度を目標として基準や指針値を組み立てます。この水準が生涯リスクレベルです。
我が国が採っている目標は生涯リスクレベル10-5(10万分の1)です。この肢は100万分の1という一桁小さい値を我が国の目標として示している点が誤りで、桁だけを差し替える典型的な作りになっています。
紛らわしいのは、100万分の1という水準も国際的な議論のなかでは登場する数字だという点です。聞き覚えのある数字を反射的に選ぶと取り違えます。閾値のない物質に用いる生涯リスクレベルと、閾値のある物質でNOAELから導く許容摂取量とは、そもそも考え方の異なる別系統の指標である点もあわせて押さえておきます。
覚え方
- 有害性を決めるのは物質の性状・暴露量・生体側の条件の三本柱。どれが欠けても影響は語れない。
- 暴露量=濃度×時間。薄くても長ければ暴露量は増える。
- 閾値あり→NOAELから基準を導く。閾値なし→生涯リスクレベル10-5(10万分の1)を目標にする。
- NOAELは有害な影響が現れない最大の暴露量。安全とされる量そのものではなく、基準づくりの出発点。
理解度チェック
影響に閾値がない物質について、我が国が実質的に安全とみなす目標のリスク水準は。
生涯リスクレベル10-5(10万分の1)です。この水準に対応する濃度をもとに、環境基準や指針値が設定されます。
無毒性量(NOAEL)とは何を指すか。
有害な影響が現れない最大の暴露量のことです。閾値があると考えられる物質では、このNOAELを出発点に不確実係数で割るなどして基準値を導きます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気概論 問題」(公式PDF)
- 中央環境審議会「有害大気汚染物質に係る健康リスク評価及び環境基準の設定の考え方」
※ この記事の確認日:2026年7月