平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問7を解説|シアン排水のオゾン酸化法(強い酸化力でも壊せない相手がいる)
平成30年度 水質有害物質特論 問7は、オゾンの強い酸化力を使ってシアンを壊す排水処理についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
シアンを酸化して分解する手段には塩素を使う方法とオゾンを使う方法があり、ここで扱われるのは後者です。問われているのは、分解された先に何が残るのか、金属と手を組んだシアンはどうなるのか、反応の速さは何で決まるのか、という三つの角度です。引っかけの核心はひとつで、オゾンの酸化力を万能とみなしているところにあります。シアンは相手の金属によって結び付きの強さが大きく違い、簡単にほどける組合せもあれば、酸化剤を浴びせても崩れない組合せもあります。強い薬剤を持ち出せば何でも片付くという発想を、この科目は繰り返し否定してきます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | シアンは酸化が進むと窒素と炭酸水素塩の形にまで分解されます。 |
| (2) | ○(正しい) | ニッケルと組んだシアンはオゾンでほどけ、ニッケルは酸化物となって分離できます。 |
| (3) | ○(正しい) | ごく少量の銅が混じっていると、酸化分解を後押しする触媒としてはたらきます。 |
| (4) | ○(正しい) | 気体のオゾンが水に溶け込む段階が最も遅く、ここが全体の速さを決めます。 |
| (5) | ×(誤り) | 金や銀と組んだシアンは非常に安定で、オゾンでも容易には分解できません。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
シアンは単独で水に溶けている場合と、金属を抱え込んだ形で存在する場合とで、扱いやすさがまるで違います。金属と組んだ状態はひとまとまりで安定しており、その安定さの度合いは相手の金属によって段違いです。亜鉛やカドミウムと組んだものは比較的ほどけやすく、銅やニッケルもオゾンの酸化に応じます。ところが金や銀と組んだシアンは飛び抜けて結び付きが強く、オゾンの酸化力をもってしても簡単には壊れません。容易に分解できるという記述は、この序列を無視している点で誤りです。
この序列は、他の処理法の適用範囲を考えるときにもそのまま効いてきます。塩素で酸化する方法でも電気分解による方法でも、崩せるのは結び付きの弱い側までで、強く組まれたものは残ります。だからこそ鉄と組んだシアンには酸化ではなく沈殿として回収する別の手立てが用意されているわけです。相手の金属を見てから処理法を選ぶという順序が、シアン処理の基本設計になります。金や銀を含むシアン排水についても、オゾン一本に任せて片が付くとは考えず、別の手段を組み合わせる前提で見る必要があります。
あわせて、オゾンを使う処理そのものの性格も押さえておきます。オゾンは気体として吹き込まれるため、水に溶け込むまでが一番の関門です。反応そのものは速くても、溶け込む速さが追いつかなければ全体は進まず、ここが処理の速度を決めます。装置の設計で気泡を細かくしたり接触時間を確保したりするのは、この関門を広げるためです。また、水中にごく少量の銅が混じっていると分解が後押しされることも知られており、うまく利用すれば処理を助ける材料になります。分解の行き先が窒素と炭酸水素塩であることまでを一続きで思い出せるようにしておくと、この形式の問題には安定して対応できます。
覚え方
- 金・銀のシアノ錯体はオゾンでも壊れない。容易に分解できるとあれば疑う。
- シアノ錯体の安定さは相手の金属しだい。弱い側から順に酸化で崩れる。
- シアンの行き着く先は窒素と炭酸水素塩。壊す方向の処理はここまで進む。
- オゾン処理の遅い段階は反応ではなく、気体が水へ溶け込む過程。
- 微量の銅は邪魔者ではなく反応を助ける触媒。
理解度チェック
オゾン酸化法で分解しにくいシアノ錯体はどれか。
金や銀のシアノ錯体です。結び付きが非常に強く、オゾンの強い酸化力でも容易には分解できません。ニッケルのシアノ錯体は分解され、ニッケルは酸化物として分離されます。
オゾン酸化法の処理速度を決めているのはどの段階か。
オゾンが水に溶け込む段階です。酸化反応そのものより気体から水への移動が遅いため、気泡を細かくする、接触時間を長く取るといった工夫が効いてきます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月