平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問11を解説|試料を保存するときの液性と温度(シアンはアルカリ側)
平成29年度 水質有害物質特論 問11は、測定する項目ごとに定められた試料の保存のしかたの組合せについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
採ってきた水をそのまま置いておくと、測る前に値が変わってしまいます。金属は容器の壁に吸い付き、酸化されやすいものは形を変え、揮発しやすいものは抜け、壊れやすいものは分解します。そこで項目ごとに、壁に付かせない・形を変えさせない・逃がさないための条件が決められています。分かれ目は、酸性側に振ると猛毒の気体になって飛んでしまう項目に、わざわざ酸を加える条件が組み合わされている点です。他の項目で酸を加える条件が並んでいるので、その流れで読み飛ばしやすくなっています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 金属は酸を加えて低いpHに保ち、容器壁への吸着や沈殿を防ぎます。 |
| (2) | ○(正しい) | 還元されやすいので薬品は加えず、低温の暗所に置いて時間を稼ぎます。 |
| (3) | ×(誤り) | 酸を加えると猛毒の気体となって失われます。アルカリ側で保つべき項目です。 |
| (4) | ○(正しい) | 分解を抑えるため、わずかに酸性側に調整して保存します。 |
| (5) | ○(正しい) | 揮発しやすいので低温の暗所に置き、凍らせないよう管理します。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
シアンは、水中でシアン化物イオンの形でいるうちは水に留まっています。ところが酸を加えるとただちにシアン化水素という猛毒の気体に変わり、水面から抜け出していきます。結果として測定値が低く出るだけでなく、試料を扱う人が有毒な気体にさらされるという安全上の問題も生じます。したがって保存条件は逆で、水酸化ナトリウムを加えて強いアルカリ側に保ち、イオンの形に留めておきます。基準では、直ちに試験できない場合は水酸化ナトリウムを加えてpH12程度として保存すると定められています。
紛らわしいのは、分析そのものの前処理としては酸性側で蒸留する操作が行われることです。試料を酸性にしてシアン化水素を発生させ、それをアルカリ溶液に捕集して定量するという流れです。しかしこれは、発生した気体を受け止める仕掛けを装置として用意したうえでの操作であり、保存の段階で酸を入れてよい理由にはなりません。受け皿のない容器で同じことをすれば、ただ失うだけです。「分析工程で酸を使うから保存も酸性」という混同が、この肢の狙いどころです。
他の項目も、それぞれ理由が明確です。金属は酸を加えて低いpHにすることで、容器の壁への吸着や、水酸化物になっての沈殿を防ぎます。酸化数の変わりやすい項目は、薬品を加えると形が動いてしまうので何も加えず、低温と遮光で変化の速さそのものを抑えます。壊れやすい農薬類は、わずかに酸性側にすることで加水分解を遅らせます。揮発しやすい項目は、低温の暗所で気相への逃避を抑えますが、凍らせると容器が破損したり成分が偏ったりするため、凍結は避けます。保存条件は「何が失われるか」から逆算すると、丸暗記に頼らずに組み合わせられます。
覚え方
- シアンはアルカリ側で保存。酸を入れると猛毒の気体で飛ぶ。
- 金属は酸を加えて低いpHへ。狙いは容器壁への吸着と沈殿の防止。
- 酸化数が動きやすい項目は薬品を入れず、低温・暗所で時間を稼ぐ。
- 揮発しやすい項目は低温・暗所。ただし凍らせない。
- 保存条件は「何が失われるか」から逆算する。丸暗記しない。
理解度チェック
シアンを含む試料に酸を加えて保存してはならないのはなぜか。
酸を加えるとシアン化物イオンが猛毒の気体であるシアン化水素に変わって揮散するためです。測定値が低く出るうえ、取り扱う人の安全にも関わります。水酸化ナトリウムを加えて強いアルカリ側に保ちます。
金属を測る試料に酸を加えるのは、何を防ぐためか。
金属イオンが容器の壁に吸着することと、水酸化物などとして沈殿することを防ぐためです。低いpHに保てば金属はイオンのまま水中に留まるので、採水時の濃度を測定まで維持できます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
- 環境省「排水基準を定める省令の規定に基づく環境大臣が定める排水基準に係る検定方法」(シアン化合物の試料保存)
※ この記事の確認日:2026年7月