平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問10を解説|曝気で追い出せない物質(水と混ざり合う環状エーテル)
平成29年度 水質有害物質特論 問10は、空気を吹き込んで水から追い出す手法が通じにくい物質を一つ選ぶ問題です。当てはまるものを選びます。
この問題のポイント
空気を吹き込んで物質を水から追い出せるかどうかは、気体になりやすさと、水への居心地のよさという二つの要素で決まります。沸点が低く、しかも水になじみにくい物質ほど気相へ逃げやすくなります。この問題は、その物差しを持っているかを問うています。分かれ目は、名前の形は他の有機化合物と似ているのに、水との相性だけがまったく違う一つを見抜けるかどうかです。環のなかに酸素が入っていて水分子と手をつなぐため、空気をいくら送り込んでも水から離れたがりません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(曝気で分離しにくい物質)
曝気での挙動
| 選択肢 | 曝気での挙動 | 読み解き |
|---|---|---|
| (1) | 分離できる | 液性をアルカリ側に振れば分子の形になり、吹き込みで追い出せます。 |
| (2) | 分離できる | 揮発性の有機塩素化合物で、気相へ移りやすい部類です。 |
| (3) | 分離できる | 沸点が低く、この中では最も気相へ逃げやすい物質です。 |
| (4) | 分離しにくい | 水と自由に混ざり合い、気相へ移る割合が極端に小さくなります。 |
| (5) | 分離できる | 水に溶けにくい芳香族で、吹き込みによって気相へ移ります。 |
ここが分かれ目
曝気で抜けるかどうかは、その物質が気相と液相にどう振り分けられるかで決まります。分子のなかに水となじむ部分があり、水分子と水素結合で強く手をつなぐ物質は、空気を吹き込んでも水側に留まり続けます。1,4-ジオキサンは六員環の向かい合う位置に酸素原子が二つ入った構造で、この酸素が水と手をつなぎます。その結果、水と任意の割合で混ざり合い、気相へ逃げる割合が極端に小さくなります。沸点だけを見れば水と近い程度なのに曝気が効かないのは、この水とのなじみやすさが効いているからです。
もう一つの罠がアンモニアです。アンモニアは水に非常によく溶けるので、直感的には抜けないように思えます。しかし水中のアンモニアは、液性によってイオンの形と分子の形の間で行き来します。アルカリ側に振れば分子の形が増え、この形なら空気を吹き込んで追い出せます。実際、この原理を使った処理は窒素対策の定番として使われています。液性を変えることで形を選べる相手は、曝気の適用外にはなりません。「よく溶ける=抜けない」と短絡すると、この肢を選んでしまいます。
1,4-ジオキサンは、曝気だけでなく活性炭吸着も効きにくいという二重の難しさを持ちます。炭の表面は水になじみにくい物質を引き寄せるので、水と親しいこの物質は素通りしてしまうからです。そのため、オゾンや紫外線を組み合わせた促進酸化や、分解できる微生物を使う処理といった別の手当てが必要になります。難処理物質の代表として、名前と理由をひとまとめに覚えておくと、他の年度の出題にも対応できます。
覚え方
- 1,4-ジオキサンは水と混ざり合い、曝気も活性炭も効かない。
- 曝気の可否は「気体になりやすさ×水になじみにくさ」の掛け算で決まる。
- アンモニアはアルカリ側に振れば分子の形になり、曝気で抜ける。
- 揮発性の有機塩素化合物や芳香族は曝気向き。
- 難処理物質には促進酸化や分解菌。通常の物理処理では届かない。
理解度チェック
1,4-ジオキサンが曝気で分離しにくいのはなぜか。
環のなかにある二つの酸素原子が水分子と水素結合をつくり、水と任意の割合で混ざり合うためです。液相に留まろうとする力が強く、空気を吹き込んでも気相へ移る割合が極端に小さくなります。
アンモニアは水によく溶けるのに、なぜ曝気で追い出せるのか。
水中のアンモニアは液性によってイオンの形と分子の形の間で移り変わり、アルカリ側に振ると分子の形が増えるからです。この形であれば揮散するため、pHを上げてから空気を吹き込む処理が成り立ちます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月