平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問7を解説|ほう素とふっ素を除く方式の限界(カルシウム塩だけでは届かない)
平成29年度 水質有害物質特論 問7は、ほう素とふっ素を含む排水の手当てについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
どちらの元素も、凝集沈殿で大量分を落とし、吸着樹脂で仕上げるという二本立てで扱われます。四つの肢は、その組み合わせや薬剤の種類を正しく述べたものです。引っかけは、ある薬剤を加えるだけで規制の水準まで届くと言い切っている点にあります。溶けにくい塩ができるという事実は正しいのですが、溶けにくさには限度があり、しかも生成した粒子が細かくて沈みにくいという別の問題も重なります。「溶けにくい=いくらでも下げられる」という飛躍が、この問題の落とし穴です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | アルミニウム塩に水酸化カルシウムを添える凝集沈殿は、実際に用いられる手当てです。 |
| (2) | ○(正しい) | ほう素用には、糖アルコール型の官能基を持つ専用の吸着樹脂があります。 |
| (3) | ×(誤り) | カルシウム塩だけの一段処理では規制の水準まで下がらず、後段の凝集沈殿が要ります。 |
| (4) | ○(正しい) | 濃度が下がった段階では、アルミニウム塩を使った凝集沈殿で仕上げられます。 |
| (5) | ○(正しい) | ふっ素用の吸着樹脂には、希土類の水酸化物をイオン交換の担い手にしたものがあります。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
ふっ化カルシウムは確かに溶けにくい塩ですが、溶けにくさは無限ではありません。加えて、生成した粒子が細かいコロイド状になりやすく、沈降分離で取り切れない分が上澄みに残ります。この二つが重なるため、カルシウム塩を加えるだけの一段処理では、排水基準の水準まで下げることはできません。基準では、ふっ素及びその化合物の一律排水基準は8 mg/L(海域へ排出する場合は15 mg/L)と定められていますが、カルシウム塩だけの処理で実際に到達する濃度はこれを上回るのが普通です。この肢は、理論上の溶けにくさと実際に届く濃度を混同させる作りになっています。
そこで現場では二段構えを取ります。一段目でカルシウム塩により大半のふっ素を溶けにくい塩として沈め、二段目でアルミニウム塩を足し、生じる水酸化アルミニウムのフロックに残りのふっ素を吸着させて仕上げます。二段目が成り立つのは、一段目を経て濃度が下がっているからです。濃い段階では溶解度を利用し、薄い段階では吸着を利用するという役割分担が、この処理の組み立てになっています。もう一つの肢が、比較的低い濃度の排水にはアルミニウム塩を使った凝集沈殿が使えると述べているのは、まさにこの二段目の話です。二つの肢を並べて読むと、一段では足りないことが問題文の側からも示唆されていると分かります。
ほう素も似た構図です。凝集沈殿だけでは基準の水準に届きにくく、仕上げには専用の吸着樹脂が使われます。ほう素用は糖アルコール型の官能基でほう酸を挟み込むもの、ふっ素用は希土類の水酸化物をイオン交換の担い手とするもので、樹脂の中身は別です。どちらも「凝集沈殿で粗取り、樹脂で仕上げ」という二段の型で覚えておけば、薬剤名を取り違えても構造で立て直せます。
覚え方
- カルシウム塩の一段だけではふっ素は基準に届かない。二段目にアルミニウム塩。
- 一段目は溶解度で粗取り、二段目は吸着で仕上げ。濃さで手法を変える。
- 溶けにくい塩でも、細かいコロイドとして残る分がある。
- ほう素用の吸着樹脂は糖アルコール型、ふっ素用は希土類の水酸化物を使う型。
- ほう素の凝集沈殿では、アルミニウム塩に水酸化カルシウムを添える。
理解度チェック
カルシウム塩だけの処理でふっ素を基準の水準まで下げられないのはなぜか。
ふっ化カルシウムの溶けにくさには限度があるうえ、生成した粒子が細かいコロイド状になって沈降分離で取り切れないためです。実際に到達する濃度は一律排水基準の8 mg/Lを上回るのが普通で、後段の処理が必要になります。
ふっ素排水の二段処理は、それぞれの段で何を利用しているか。
一段目はカルシウムの塩を使い溶解度の低さを利用して大半を沈め、二段目はアルミニウム塩から生じる水酸化アルミニウムへの吸着を利用して残りを取ります。濃い段階と薄い段階で原理を使い分けています。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
- 環境省「排水基準を定める省令」(ふっ素及びその化合物の一律排水基準)
※ この記事の確認日:2026年7月