平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問8を解説|鉄錯体を含むシアン処理のフロー(酸と二価の鉄)
平成29年度 水質有害物質特論 問8は、鉄と強く結んだシアンを含む排水の工程図を読み、二か所に加える薬品の組合せを選ぶ問題です。正しい組合せを選びます。
この問題のポイント
工程図は、酸化剤を二段に分けて加えて分解し、そのあと溶けにくい塩に変えて凝集沈殿で分離するという流れになっています。前半はシアンの一般的な分解処理、後半は分解では手に負えない相手への別の手当てで、性格の異なる二つの処理が直列につながっています。分かれ目は二つです。一つは二段目の分解をどの液性で進めるか、もう一つは溶けにくい塩をつくる相手の金属をどの酸化数で入れるか。どちらも一段目の条件をそのまま引きずると外れます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)
空欄に入る薬品
| 記号 | 入る薬品 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | 硫酸 | 二段目の分解は液性を下げて進めます。アルカリを足す向きではありません。 |
| イ | 硫酸鉄(Ⅱ)の七水和物 | 鉄と結んだシアンを溶けにくい塩に変えるには、二価の鉄が要ります。 |
ここが分かれ目
酸化剤による分解は二段構えで行われます。一段目は強いアルカリ側で進めます。シアンを含む水に酸を加えると猛毒の気体が発生するため、この段では液性を高く保つことが安全上の絶対条件です。工程図の一段目に液性の調整が明示されているのは、そのためです。ところが二段目は事情が違います。一段目で生じた中間体をさらに分解して窒素と炭酸まで持っていく反応は、液性を中性付近まで下げたほうが速く進みます。したがって二段目に添えるのは酸の側の薬品になります。ここでアルカリ剤を選ぶと、一段目と同じ条件のまま二段目を回すことになり、反応が遅れて中間体が処理水に残ります。一段目と二段目で液性の向きが切り替わる、という点がこの処理の骨格です。
もう一つの分かれ目が鉄の酸化数です。シアンが鉄と強く結んだ錯体は、酸化剤を加えても壊れません。分解でどうにもならない以上、壊すことをあきらめて、溶けにくい塩に変えて沈めるという別の道を取ります。この塩をつくる相手として働くのは二価の鉄で、三価の塩やアルミニウム塩では狙った溶けにくい塩になりません。硫酸鉄(Ⅱ)の七水和物は、二価の鉄をそのまま供給できる代表的な薬品で、水に溶けやすく扱いやすいという実務上の利点もあります。選択肢には三価の鉄塩やアルミニウム塩も並んでいますが、いずれもここでは代役になりません。
最後の段では高分子凝集剤を加えます。できた溶けにくい塩は粒子が細かく、そのままでは沈みにくいため、粒子どうしを橋渡ししてフロックに育てる必要があるからです。工程図全体を「分解できるシアンは二段で壊し、壊せないシアンは塩にして沈める」という二本立てとして読めれば、どの位置にどの薬品が入るかは自然に決まります。
覚え方
- 酸化剤による分解は一段目がアルカリ側、二段目は中性寄りへ下げる。
- 一段目で液性を下げると猛毒の気体が出る。下げてよいのは二段目だけ。
- 鉄と強く結んだシアンは酸化剤で壊れない。溶けにくい塩にして沈める。
- 溶けにくい塩をつくる相手は二価の鉄。三価やアルミニウムでは代われない。
- 仕上げは高分子凝集剤。細かい粒子をフロックに育てて沈降分離。
理解度チェック
シアンの分解処理で、一段目と二段目の液性が異なるのはなぜか。
一段目は酸を加えると猛毒の気体が発生するため、強いアルカリ側で行う必要があるからです。二段目は中間体をさらに分解する反応で、液性を中性付近まで下げたほうが速く進むため、酸を加えて調整します。
鉄と強い錯体をつくったシアンは、なぜ酸化分解ではなく沈殿で処理するのか。
この錯体は非常に安定で、酸化剤を加えても分解されないからです。そこで二価の鉄を加えて溶けにくい塩に変え、高分子凝集剤でフロックに育てて凝集沈殿により分離します。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月