平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問29を解説|補正を掛けてから合成し直す
平成29年度 騒音・振動特論 問29は、ばね支持を施す前と後の帯域別の測定結果を並べ、その表から読み取れる内容を判定する正誤問題です。5つの記述から正しいものを1つ選びます。
この問題のポイント
表に載っているのは重みを掛ける前の生の値なので、人の感じ方に合わせた量を知るには自分で計算し直す必要があります。分かれ目は、重みなしの合成と重みありの合成では低減量が一致しないという点です。低い帯域はほぼそのまま残り、高い帯域は大きく削られるので、どの帯域で下がったかによって結果が変わります。今回は最も大きく下がったのが削られる側の帯域なので、感じ方に合わせた量の低減は生の低減より小さくなります。この違いを計算せずに眺めただけでは、四つの数値の記述を切り分けられません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(正しい記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 重みを掛けて合成すると対策前は約63 dBです。3 dBほど高く見積もっています。 |
| (2) | ×(誤り) | 生の合成が約75 dB、重みありが約63 dBなので、差は約12 dBです。 |
| (3) | ×(誤り) | 生の合成は約75 dBから約61 dBへ下がるので、低減はおよそ15 dBあります。10 dBでは足りません。 |
| (4) | ○(正しい) | 重みありの合成は約63 dBから約50 dBへ下がります。差は約14 dBで、示された値との開きは1 dB程度です。他の4つは2.5〜5 dBずれるので、これが正解になります。 |
| (5) | ×(誤り) | ばね側の固有振動数にあたる帯域は対策後に増えるはずです。全帯域が下がっているので該当しません。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 | 生の値をそのままエネルギー合成する。対策前は約75 dB、対策後は約61 dB。差はおよそ15 dB。 |
| 手順2 | 上下向けの重みを用意する。4〜8 Hzを基準とし、16 Hzが約−6 dB、31.5 Hzが−12 dB、63 Hzが−18 dB(JIS C 1510)。 |
| 手順3 | 対策前に重みを掛ける。45、49、49、63、47 dBとなり、合成して約63 dB。 |
| 手順4 | 対策後にも同じ重みを掛ける。40、39、39、48、32 dBとなり、合成して約50 dB。 |
| 手順5 | 二つの差を取る。63−50=約14 dB。生の低減量(約15 dB)とは一致しない。 |
ここが分かれ目
重みなしの合成では、31.5ヘルツの帯域が突出しているのでそこがほぼ全体を決めます。この帯域が15デシベル下がったのだから、全体も同じくらい下がって当然です。ところが重みを掛けると、31.5ヘルツは12デシベル削られて他の帯域と肩を並べる高さになります。削られた分だけ、対策の効果が全体に反映されにくくなるわけです。だから重みありの低減量は生の低減量より小さく出ます。
もう一つ、ばね側の固有振動数を表から読み取ろうとする記述にも注意が要ります。ばねで支えると、固有振動数の付近では力が増幅されるので、その帯域だけは対策後に値が上がります。今回はすべての帯域で下がっているので、固有振動数がこの表の範囲より下にあると判断できます。最も大きく下がった帯域を固有振動数と読むのは、増幅と低減を取り違えた読み方です。
実務でもこの区別は重要です。生の値だけを見て「15デシベル下がった」と報告すると、規制の判断に使う量では14デシベルしか下がっていないという食い違いが起きます。対策の効き目を人の感じ方に合わせた量で語るのか、それとも純粋な物理量で語るのかを、報告のたびに明示しておく必要があります。
覚え方
- 生の合成と重みを掛けてからの合成は別物。低減量も一致しない。
- 高い帯域ほど重みで削られる。31.5 Hz帯で12 dB、63 Hz帯で18 dB。
- 削られる帯域で下がった対策は、感じ方に合わせた量では効きが薄く出る。
- ばね側の固有振動数にあたる帯域は、対策後に増える。減った帯域を共振点と読まない。
- 全帯域が下がったなら、固有振動数がその範囲の外にあると分かる。
理解度チェック
ばねで支えた後、ある帯域だけ値が上がっていたら何が起きていますか。
その帯域がばね側の固有振動数に近いということです。振動数比が√2を下回る範囲では伝わる力が増えるためです。支持ばねをさらに柔らかくして、固有振動数を運転域から遠ざける必要があります。
生の合成と重みありの合成で、差が大きく開くのはどんな場合ですか。
高い帯域にエネルギーが集中している場合です。重みで大きく削られるためです。逆に4〜8 Hz付近が支配的なら、両者はほとんど同じ値になります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題・正解」(公式PDF)
- 日本産業規格 JIS C 1510「振動レベル計」付表(鉛直振動感覚補正特性の基準レスポンス:4 Hz +0.1、8 Hz −0.9、16 Hz −6.1、31.5 Hz −12.0、63 Hz −18.0 dB)
※ この記事の確認日:2026年7月