平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問28を解説|振動レベルから欠けたバンド値を逆算
平成29年度 騒音・振動特論 問28は、周波数帯ごとの測定結果のうち1か所が空欄になっており、全体の値が与えられている条件からその空欄を埋める計算問題です。数値を選びます。
この問題のポイント
全体の値は、帯域ごとの測定値をそのまま足したものではありません。人の感じ方に合わせた重み付けを各帯域に掛けたうえで、エネルギーに戻して合計したものです。ですから逆算も同じ順路を逆にたどります。分かれ目は最後のひと手間で、引き算で出てくるのは重みを掛けた後の値だという点。ここで止めて答えると、16ヘルツの重み分だけ小さい数値を選ぶことになります。用意された選択肢は6デシベル刻みではありませんが、5デシベル刻みなので、戻し忘れると隣の肢に着地します。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | この値だと全体は約63 dBにしかならず、与えられた条件に2 dB足りません。 |
| (2) | ×(誤り) | 全体は約64 dB。まだ届きません。補正を戻し忘れるとこの付近の値を選びがちです。 |
| (3) | ○(正しい) | 補正後の60 dBに相当し、他の帯域と合わせると全体が約65 dBになって条件と一致します。 |
| (4) | ×(誤り) | 全体が約67 dBまで上がってしまい、2 dB超えます。 |
| (5) | ×(誤り) | この帯域だけで全体を約71 dBまで押し上げてしまいます。桁違いに大きすぎます。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 | 上下の向きの重み付けを用意する。4〜8 Hzを基準(ほぼ0 dB)とし、2 Hzで約−3 dB、16 Hzで約−6 dB、31.5 Hzで−12 dB、63 Hzで−18 dB(JIS C 1510の鉛直振動感覚補正特性)。 |
| 手順2 | 分かっている帯域に重みを掛ける。2 Hz→44、4 Hz→60、8 Hz→60、31.5 Hz→44、63 Hz→43 dB。 |
| 手順3 | この5つをエネルギーに戻して合計する。104.4+106.0+106.0+104.4+104.3≒2.07×106(レベルにして約63.2 dB)。 |
| 手順4 | 全体からその分を差し引く。106.5−2.07×106≒1.09×106、レベルにして約60.4 dB。これが16 Hzの重み付け後の値。 |
| 手順5 | 重みを戻す。16 Hzは6 dB削られていたので、60.4+6≒66 dB。 |
ここが分かれ目
つまずきどころは三つあります。一つ目は、重みを掛けずにそのまま合計してしまうこと。31.5 Hzと63 Hzは12 dBと18 dBも削られる帯域なので、掛けないと全体が実際よりずっと大きく出ます。生の値では63 Hzが最大級ですが、重みを掛けた後は最も小さい部類に落ちます。どの帯域が効いているかは、重みを掛けてから判断するものです。
二つ目は、レベルのまま引き算をしてしまうこと。全体から一部を取り除く操作は、必ずエネルギーに戻してから行います。65から63.2を引いて1.8デシベルと考えるのは、まったく意味の違う計算です。実際には全体のエネルギーのうち約3分の1が16ヘルツの寄与で、残りが他の帯域という関係になっています。
三つ目が最後の戻し忘れです。手順4で出るのは重み付け後の値なので、問われている測定値に直すには削られた分を足し戻す必要があります。ここを飛ばすと約60デシベルで止まり、用意されている61という肢にちょうど着地します。逆算の問題では、往路で何を掛けたかを控えておき、復路で必ず戻すという癖をつけてください。
覚え方
- 全体の値は重みを掛けてからエネルギーで合成した結果。生の値の合計ではない。
- 上下向けの重みは4〜8 Hzが基準。高い側は1オクターブごとに6 dBずつ削られる。
- 足すのも引くのもエネルギーに戻してから。レベルのままの加減はしない。
- 逆算で出るのは重み付け後の値。最後に削られた分を足し戻す。
- 効いている帯域は重みを掛けた後で決まる。生の値の最大とは限らない。
理解度チェック
生の値が同じ61 dBでも、8 Hzと63 Hzでは全体への効き方がどれくらい違いますか。
18 dBほど違います。8 Hzはほぼそのまま残るのに対し、63 Hzは18 dB削られるためです。エネルギーでいえば60分の1以下の寄与にしかなりません。
全体から一部の寄与を差し引くとき、なぜエネルギーに戻す必要があるのですか。
デシベルが対数の量だからです。対数のまま引くと比の計算になってしまい、量の引き算になりません。10のべき乗に直してから引き、最後に対数へ戻します。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題・正解」(公式PDF)
- 日本産業規格 JIS C 1510「振動レベル計」付表(鉛直振動感覚補正特性の基準レスポンス:2 Hz −3.2、4 Hz +0.1、8 Hz −0.9、16 Hz −6.1、31.5 Hz −12.0、63 Hz −18.0 dB)
※ この記事の確認日:2026年7月