平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問20を解説|片対数で直線になるのはどちらか
平成29年度 騒音・振動特論 問20は、幾何減衰と内部減衰の係数だけが異なる二つの推定条件を並べ、離れた地点での予測値がどう振る舞うかを問う正誤問題です。5つの記述から正しいものを1つ選びます。
この問題のポイント
地盤を伝わる揺れの予測式は、距離の対数に比例して減る項と、距離そのものに比例して減る項の足し算でできています。前者は波面が広がることによる減り、後者は地盤が振動のエネルギーを熱に変えることによる減りです。分かれ目は、この二つの項の距離への効き方の違い。横軸を対数目盛にしたグラフでは、対数に比例する項だけなら直線になりますが、距離そのものに比例する項が入ると遠方ほど急に落ちる曲線になります。この形の違いを押さえれば、5つの記述はすべて機械的に判定できます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(正しい記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 近い側では逆です。2 mの地点で比べると、幾何減衰の弱いBのほうが約2.6 dB高く出ます。 |
| (2) | ×(誤り) | 遠い側では逆転します。100 mでは内部減衰が30 dB以上積み上がり、Bが大きく下回ります。 |
| (3) | ○(正しい) | Aは内部減衰の項が消え、対数に比例する項だけが残るので、横軸を対数目盛にすると傾き一定の直線になります。 |
| (4) | ×(誤り) | Bには距離そのものに比例する項があり、対数目盛では遠方ほど下へ折れ曲がる曲線になります。 |
| (5) | ×(誤り) | 近い側でBが上、遠い側でAが上なので、途中で必ず交わります。この条件ではおよそ50 m付近です。 |
ここが分かれ目
使う式は、基準点のレベルから「幾何減衰係数の20倍と距離比の常用対数の積」を引き、さらに「内部減衰係数に距離の差を掛けて8.68倍した量」を引く、という形です。8.68という数はネイピア数の対数をデシベルに直すための換算係数で、条件によらず一定です。Aは内部減衰係数が0なので第2項がまるごと消え、残るのは対数に比例する項だけになります。対数目盛の横軸に対して対数の項は一次式ですから、グラフは直線です。
Bは幾何減衰係数が半分しかない代わりに、内部減衰の項を持ちます。この項は距離の1乗で効くので、対数目盛では右へ行くほど加速度的に落ちます。近い場所だけ見て「Bは減りが遅い」と決めつけると、遠方の予測を大きく外します。実際、1 mから2 mへの倍増でAは6 dB下がるのにBは3.3 dBしか下がりません。ところが100 mまで延ばすとAが40 dB下がるのに対し、Bは合計54 dB以上下がります。
両者が同じ値をとる地点は、対数に比例する差と距離に比例する差が釣り合う点として求まります。この条件ではおよそ50 mです。「常に一方が大きい」と書いた肢は、この交点の存在を見落としています。実務でも、近傍の実測から遠方を外挿するときに内部減衰をどう見るかで結論が変わるので、どちらの項が支配するかを距離帯ごとに意識しておく必要があります。
覚え方
- 距離減衰は対数に比例する幾何減衰+距離に比例する内部減衰の足し算。
- 横軸が対数目盛のとき、直線になるのは幾何減衰だけの場合。内部減衰があれば下に曲がる。
- 近距離を支配するのは幾何減衰、遠距離を支配するのは内部減衰。効く場所が違う。
- 係数の組合せが違う二つの予測線は、どこかで必ず交わる。片方が常に上ということはない。
- 内部減衰の項をデシベルにする換算係数は8.68。式のどこに掛かるかを覚えておく。
理解度チェック
横軸を対数目盛にした距離減衰のグラフが下に曲がっているとき、何が働いていますか。
地盤の内部減衰です。距離そのものに比例する項があるためで、遠方ほど傾きが急になります。直線に見えるなら内部減衰は無視できる大きさです。
近傍の実測値だけから遠方を予測すると、どんな誤りが起きやすいですか。
遠方を高く見積もりすぎる誤りです。近傍では幾何減衰が支配的で内部減衰の効きが見えにくいためです。逆に内部減衰を過大にとると、遠方を低く見積もりすぎます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月