平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動特論 問17を解説|慣性力は速度でなく加速度で決まる
平成29年度 騒音・振動特論 問17は、機械から出る揺れを抑えるときの基本的な考え方をまとめて確かめる正誤問題です。5つの記述から誤っているものを1つ選びます。
この問題のポイント
衝撃・釣り合わせ・ばね支持と話題があちこちに散らばって見えますが、どの肢も「力が何によって決まるか」を押さえていれば判断できます。分かれ目は、行ったり来たりする部分が生み出す力を何に結び付けるかという1点。物体が周囲を押し返す力は、位置でも速さでもなく加速度に比例します。正弦的な運動では加速度の大きさが角振動数の2乗で効くので、回転を上げたときに力がどれだけ跳ね上がるかまで、この一本で説明がつきます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 力と時間の積が一定なら、当たっている時間を延ばすほど力の山は低くなります。緩衝材を挟む対策の根拠です。 |
| (2) | ○(正しい) | 剛体は上下左右前後の並進3つと各軸まわりの回転3つを持ち、中心を外れた力はその全部を励起します。 |
| (3) | ○(正しい) | 1つの面でつり合わせても軸方向にずれた偶力が残るため、面を変えた調整まで必要になります。 |
| (4) | ×(誤り) | 生じる力を速度に結び付けている点が誤りです。質量と加速度の積で決まります。 |
| (5) | ○(正しい) | ばねで支えると高い周波数の成分がよく削られ、残った低い成分は減衰しにくいため、遠方まで届きやすくなります。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
ピストンやクロスヘッドのように往復する部分は、常に加速と減速を繰り返しています。そこに現れる力は運動の第二法則そのままで、質量と加速度の積です。変位が正弦的に変わる運動では、加速度の振幅は変位の振幅に角振動数の2乗を掛けたものになります。したがって発生する力の大きさは、質量・変位振幅・角振動数の2乗の三つで決まります。
この肢のように速さへ結び付けて覚えてしまうと、回転数を2倍にしたときの力を2倍だと見積もることになります。実際には角振動数の2乗で効くので4倍です。増速や高速化の検討で、この見誤りは対策の規模をそのまま外します。速さに応じて決まる力は、油の粘りで生じる減衰力のほうであって、往復部分の慣性とは別物です。
実務では、この関係が対策の順番も決めます。加速度で効くということは、回転数を少し落とすだけで加振力が大きく下がるということでもあります。運転条件を見直せる現場なら、防振ばねを入れるより先に検討する価値があります。逆に回転数を上げる改造をするときは、支持系の設計を同時にやり直さなければなりません。往復部分の釣り合わせにおもりを追加する手も、狙う次数を決めてから行います。
覚え方
- 慣性で生じる力は質量×加速度。正弦運動なら回転数2倍で加振力は4倍。
- 速さに比例する力は油の粘りによる減衰力。慣性の力とは出どころが違う。
- 衝撃を弱める王道は当たっている時間を延ばすこと。力の山だけが下がり、運動量の増減そのものは変わらない。
- 中心を外れた加振は並進3つ・回転3つのすべてを揺らす。支持点の配置で効かせる。
- ばね支持は高い周波数をよく削る。残るのは低い成分で、これは遠くまで届く。
理解度チェック
正弦的に往復する部分の回転数を1.5倍にすると、発生する力はおよそ何倍になりますか。
約2.25倍です。力は加速度に比例し、加速度は角振動数の2乗で効くため、1.5の2乗になります。速さに応じて決まると考え、1.5倍と答えるのが典型的な誤りです。
ばねで支えると、周囲の地盤での揺れの減り方はどう変わりますか。
距離が延びても減りにくくなります。高い周波数の成分が支持で削られ、内部減衰の小さい低い成分が主役になるためです。近くの値は下がっても、遠方での効きは思ったほどではないことがあります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月