平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動概論 問24を解説|遠ざかると弱まる主役は波面の広がり
平成29年度 騒音・振動概論 問24は、地盤のような弾性体の中を進む波の種類と、遠ざかるにつれて弱まる仕組みを扱う問題です。誤りのある記述を選びます。
この問題のポイント
地盤を伝わる波には、体の内部を進むものと、表面付近を這うものがあります。内部を進むものはさらに、進む向きに沿って伸び縮みするものと、進む向きと直角に横ずれするものに分かれます。設問の前半は、この三種類の粒子の動き方を素直に確かめる内容で、いずれも正しく書かれています。誤りが仕込まれているのは、遠ざかるにつれて揺れが弱まる仕組みのほうです。弱まる原因は二つあり、ひとつは波の面が広がって同じエネルギーが薄まること、もうひとつは地盤自身が動きの一部を熱に変えて食べてしまうことです。設問は後者だけで説明できると書いており、そこが分かれ目になります。距離減衰は広がりと吸収の二本立てと覚えておけば、この種の記述は一瞬で見抜けます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 進む向きに沿って伸び縮みする波で、通り道の物質は密になったり疎になったりします。 |
| (2) | ○(正しい) | 横ずれの波では、粒子が進む向きと直角に動きます。体積は変わらず形だけがゆがみます。 |
| (3) | ○(正しい) | 表面を這う波では、粒子が進む向きと上下の両方に動き、楕円を描くように回ります。 |
| (4) | ×(誤り) | 遠ざかるほど弱まる主役は波の面が広がることによる薄まりで、地盤の吸収だけではありません。 |
| (5) | ○(正しい) | 横ずれの波が進む速さは、表面を這う波よりわずかに速く、両者は近い値になります。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
池に石を落とすと、輪が広がるにつれて波が低くなります。水が波を食べてしまうからではなく、同じエネルギーが長い円周に配られるからです。地盤の中でも同じことが起こります。発生源から出た波は面となって広がり、その面の面積が大きくなるぶんだけ、単位面積あたりのエネルギーが薄まります。この薄まりは地盤の材質と無関係に必ず生じるので、吸収だけで距離による弱まりを語ることはできません。もし吸収がまったく起きない理想的な地盤があっても、遠くの揺れは確実に小さくなります。
広がり方は波の種類で違います。地中を進む波は半球状に広がるので面積は距離の2乗で増え、揺れの大きさは距離に反比例します。一方、表面を這う波は地表付近の薄い層に留まったまま円状に広がるため、面積は距離の1乗でしか増えず、揺れの大きさは距離の平方根に反比例するにとどまります。表面を這う波のほうが遠くまで届くのはこのためで、発生源から離れた住宅で問題になる揺れは、たいていこの表面の波が主役になっています。
地盤の吸収も、もちろん無視はできません。土や砂は動くたびに粒どうしがこすれ合い、動きの一部が熱に変わります。この効果は距離とともに指数関数的に効いてくるうえ、速い揺れほど強く働きます。だから遠くへ届くのはゆっくりした揺れが中心になり、近くではガタガタと細かく感じられた揺れが、離れると重く低い揺れに変わります。広がりによる薄まりは距離のべき乗、吸収による目減りは指数関数という違いを押さえておくと、対策を考えるときにも見通しがよくなります。近距離では広がりが効き、遠距離では吸収が効いてくる、という順序も自然に理解できます。
誤り以外の記述では、速さの比較を確認しておきましょう。表面を這う波は横ずれの波が地表で作り出すものなので、両者の速さは近く、表面の波のほうがわずかに遅くなります。地盤の性質によって細かな比率は変わりますが、横ずれの波より表面の波が速いということはありません。伸び縮みする波はこの二つよりずっと速く、遠くの発生源からの揺れでは最初に到達します。三つの波の速さの順序も、あわせて覚えておくと得です。
覚え方
- 距離による減衰は、波面の広がりと地盤の吸収の二本立て。片方だけでは説明できない。
- 地中を進む波は半球状、表面を這う波は円状に広がる。だから表面の波は遠くまで届く。
- 吸収は速い揺れほど強く効く。遠方に残るのはゆっくりした揺れ。
- 速さの順は、伸び縮みする波、横ずれの波、表面を這う波。後ろの二つは近い値。
- 伸び縮みは体積が変わる波、横ずれは形だけ変わる波、表面の波は楕円を描く。
理解度チェック
地盤がまったくエネルギーを吸収しないとしたら、遠くの揺れは小さくならないか。
それでも小さくなります。波の面が広がることで同じエネルギーが薄まるためで、この効果は地盤の材質にかかわらず必ず生じます。
発生源から離れた住宅で問題になる揺れは、どの波が主役か。
表面を這う波です。地表付近の薄い層に留まって円状に広がるため、地中を進む波よりも薄まり方が緩く、遠くまで届きます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月