平成29年度 公害防止管理者 騒音・振動概論 問25を解説|デシベルはそのまま引けない
平成29年度 騒音・振動概論 問25は、何台もの機械が動いている工場で、そのうち1台を止める前と後の測定値から、止めた機械が単独で出していた音の大きさを求める計算問題です。
この問題のポイント
デシベルは対数の目盛りですから、二つの測定値の差をそのまま引き算しても意味のある答えにはなりません。求めるのは、全部が動いていたときのエネルギーから、1台を止めた後のエネルギーを差し引いた残りです。したがっていったんエネルギーの比に戻し、差を求め、もう一度対数の目盛りに戻すという三段構えが必要になります。この設問で味わい深いのは、差がわずか4デシベルしかないのに、止めた1台のほうが残り全部よりも大きな音を出していたと分かる点です。対数の目盛りに慣れていないと、たった4デシベルの差ならほとんど寄与していないだろうと感じてしまいます。4デシベルの差はエネルギーで約2.5倍という感覚を持つことが、この問題の本質です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 停止後の値から差をさらに引いた形で、対数の目盛りを普通の数として扱っています。 |
| (2) | ×(誤り) | この値では、停止後の値と足し合わせても元の測定値に届きません。 |
| (3) | ×(誤り) | 停止後より低い値では、1台を戻したときに元の測定値まで上がりません。 |
| (4) | ×(誤り) | 停止後と同じ値なら足し合わせて3デシベル増えるだけで、元の測定値には1デシベル足りません。 |
| (5) | ○(正しい) | エネルギーに戻して差をとると約81.8デシベルとなり、選択肢の中でこれに最も近い値です。 |
計算の手順と分かれ目
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 | 二つの測定値をエネルギーの比に戻す。全部が動いていたときは基準の108.4倍、1台を止めた後は108.0倍にあたる。 |
| 手順2 | 差をとる。108.4−108.0=108.0×(100.4−1)と括り出すと計算が軽くなる。 |
| 手順3 | 対数表から100.4はおよそ2.51。括弧の中は約1.51となり、止めた1台のエネルギーは残り全部の約1.5倍と分かる。 |
| 手順4 | レベルに戻す。80+10 log 1.51 で、対数表から log 1.51 はおよそ0.18なので約1.8を足して約81.8デシベル。選択肢では82に最も近い。 |
分かれ目は手順1です。測定値の差である4デシベルを、そのまま何かの答えに使ってしまうのがいちばん多い失敗で、選択肢にもその筋道で出てくる数字が並べてあります。デシベルは10倍ごとに10ずつ増える目盛りですから、4という差はエネルギーでおよそ2.5倍を意味します。全部が動いていたときのエネルギーを2.5とすれば、1台を止めた後が1、差し引いた1台ぶんは1.5です。止めた1台のほうが、残りの機械すべてを合わせたよりも大きかったことになり、だからこそ答えが停止後の値を上回ります。
検算も簡単です。得られた約81.8デシベルと、停止後の80デシベルを足し合わせてみます。差が1.8デシベルなのでエネルギー比は約1.5対1、合計は2.5となり、80に10 log 2.5 のおよそ4を足して84デシベル。最初の測定値と一致します。引き算で求めた値は必ず足し戻して確かめる習慣をつけておくと、対数の扱いを間違えたときにその場で気づけます。
実務では、この計算は暗騒音の補正としてそのまま使われます。測りたい音源以外の音が混じっている場合、音源を止めた状態で測った値をエネルギーで差し引いて、目的の音だけを取り出します。ただし、二つの測定値の差が小さいときは注意が必要です。差が3デシベルを下回るような場合、引き算の結果はわずかな測定誤差で大きく振れてしまい、信頼できる値になりません。差が小さすぎる測定は補正しても意味をなさないため、そもそも測定条件を見直すのが筋になります。今回のように4デシベルの差があれば、補正は十分に成り立ちます。
覚え方
- デシベルは足すのも引くのもエネルギーに戻してから。目盛りのまま計算しない。
- 差が3デシベルならエネルギーは2倍、4デシベルなら約2.5倍。この感覚を持つ。
- 差が3デシベルちょうどなら、残りは停止後と同じ値。差が大きいほど残りは大きい。
- 引き算で出した値は、足し戻して元の測定値に戻るか確かめる。
- 二つの測定値の差が小さすぎると補正は不安定。測り直しを考える。
理解度チェック
全体の測定値と、1台を止めた後の測定値の差が3デシベルだったら、その1台の値はいくらか。
停止後と同じ値です。3デシベルの差はエネルギーで2倍にあたるので、止めた1台と残り全部がちょうど半分ずつ寄与していたことになります。
二つの測定値の差がごくわずかなとき、引き算による補正をしてよいか。
避けるべきです。差が小さいと、わずかな測定誤差で結果が大きく振れてしまいます。測定条件そのものを見直すのが筋になります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月