平成30年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問11を解説|りんの除去(HAPはカルシウム・MAPはマグネシウム)
平成30年度 汚水処理特論 問11は、水に溶けたりんを結晶として取り出す二つの手法で、それぞれ何を加えるかを問う穴埋め(組合せ)問題です。正しい組合せを選びます。
この問題のポイント
どちらの手法も、りんを溶けたままにせず、相手となる金属イオンを与えて溶けにくい結晶に変え、アルカリを加えて結晶ができやすい状態に持っていくという骨格は共通しています。違うのは組む相手だけです。分かれ目は、二つの略称がそれぞれどんな結晶の名前から来ているかを結び付けられるかどうか。片方は骨や歯をつくる鉱物と同じ結晶、もう片方は三つの成分が一つずつ集まった塩で、その頭文字がそのまま略称になっています。薬剤名を丸暗記しようとすると入れ替えられたときに崩れるので、結晶の正体から引き出すのが確実です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)
空欄に入る正しい語句
| 空欄 | 入る語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | カルシウム剤 | HAPはヒドロキシアパタイト、つまりりん酸カルシウム系の結晶なので、相手はカルシウムです。 |
| イ | アンモニア | MAPの結晶にはアンモニウムが組み込まれるため、これが無ければ結晶ができません。 |
| ウ | マグネシウム剤 | MAPはりん酸マグネシウムアンモニウム。足りない成分はマグネシウムなので、これを加えます。 |
この三つがそろう組合せは選択肢(3)です。
ここが分かれ目
取り違えの重心は、HAPとMAPで加える金属剤を入れ替えられる点にあります。防ぎ方は略称を結晶名に戻すことです。HAPはヒドロキシアパタイトの頭文字で、アパタイトは骨や歯を形づくる鉱物、すなわちりん酸カルシウム系の結晶です。だから原水に与えるべき相手はカルシウムであり、マグネシウムではありません。一方のMAPはりん酸マグネシウムアンモニウムの頭文字で、マグネシウム・アンモニウム・りん酸という三つの成分が一つずつ組み合わさった塩です。MAPの三文字がそのまま材料表になっていると考えれば、加える薬剤で迷うことはありません。
もう一つの落とし穴が空欄イです。ここを鉄イオンや塩化物イオンとする選択肢が混ざっていますが、それらはMAPの結晶をつくる成分ではありません。りん酸とマグネシウムだけがあってもMAPの結晶は組み上がらず、アンモニウムが欠けていれば、いくらマグネシウム剤を入れても目的の結晶は生じません。逆にいえばMAP法は、りんを回収すると同時にアンモニア性窒素も結晶の中へ取り込んでいく点に特徴があります。りんだけを狙う手法とは、そこが違います。
アルカリ剤によるpH調整が両方に共通して出てくる理由も押さえておきましょう。りん酸は水の中で、酸性側では水素イオンを付けた形で存在し、アルカリ側へ動くほど水素イオンを手放した形に変わっていきます。結晶に組み込まれるのは水素イオンが外れた側の形なので、pHを上げることで結晶ができる方向へ反応を後押しできるわけです。晶析という言葉のとおり、狙いは沈殿物を漠然と作ることではなく、狙った結晶を成長させて取り出すことにあります。
覚え方
- HAPはアパタイト=骨の成分だからカルシウム。MAPはマグネシウム・アンモニウム・りん酸の頭文字。
- 略称は結晶の名前。名前に戻せば加える薬剤は自動的に決まる。
- MAPはりんと同時にアンモニア性窒素も結晶へ取り込む。
- 晶析にアルカリ剤が要るのは、りん酸を結晶になれる形へ変えるため。
- りんを「沈めて捨てる」のが凝集沈殿、「結晶にして取り出す」のが晶析。
理解度チェック
HAP法とMAP法で、原水に加える金属剤はそれぞれ何か。
HAP法はカルシウム剤、MAP法はマグネシウム剤です。HAPはヒドロキシアパタイト(りん酸カルシウム系)、MAPはりん酸マグネシウムアンモニウムという結晶名に戻せば、加えるものが決まります。
MAP法でマグネシウム剤のほかに欠かせない成分は何か。
アンモニウム(アンモニア)です。MAPの結晶はマグネシウム・アンモニウム・りん酸が組み合わさったもので、アンモニウムが無ければ結晶ができません。そのため、りんと同時にアンモニア性窒素も回収されます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月