平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問18を解説|硝化を狙うならSRTは長めにとる
平成29年度 汚水処理特論 問18は、活性汚泥を使う設備の日々の運転管理についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
ここで問われているのは、運転員がつまみを回して動かせる量(汚泥の引き抜き、返送の割合、送気量、pH)と、その結果として現れる指標との対応関係です。引っかけは1か所に集中していて、アンモニアを酸化する細菌を槽内に住まわせるために、汚泥をどれだけ長く系内に留めるかという向きの取り違えです。ここだけ方向が逆に書かれています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | アンモニアを酸化する細菌はふえるのが遅いため、汚泥の滞留日数を短くすると槽の外へ洗い流されます。有機物だけを落とす運転より長めにとるのが正しい向きです。これが正解の肢です。 |
| (2) | ○(正しい) | 戻す汚泥の濃さが変わらないなら、戻す量の割合を増やすほど槽内に持ち込まれる汚泥が多くなり、槽内の汚泥濃度は上がります。 |
| (3) | ○(正しい) | 微生物の働きが鈍ると酸素を使わなくなるため、送り込む空気の量が同じなら余った酸素が水に残り、溶存酸素の指示値が跳ね上がります。 |
| (4) | ○(正しい) | 強い酸性やアルカリ性は微生物の活性を落とすので、中性の範囲に保つのが基本です。硝化が進む場面では酸が生じるため、なおさら監視が要ります。 |
| (5) | ○(正しい) | 汚泥の沈みにくさを表す指標は、汚泥に対してどれだけ有機物を与えているかで変わります。与えすぎると糸状の微生物が優勢になり、値が大きくなります。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
汚泥が系内に平均して何日とどまるかを表すのがSRT(汚泥滞留時間)です。毎日どれだけ余剰汚泥を引き抜くかで決まり、引き抜きを絞れば長く、たくさん引き抜けば短くなります。
ここで効いてくるのが微生物の速度差です。有機物を食べる一般の細菌は速くふえますが、アンモニアを亜硝酸や硝酸へ酸化する細菌は、世代交代にずっと時間がかかります。増殖の遅い菌は、生まれてふえる速さより早く引き抜かれてしまうと、槽内から消えてしまいます。これが洗い出し(ウォッシュアウト)で、汚泥の滞留日数を短く運用することは、まさにその洗い出しを招く方向です。硝化を成立させたいなら逆に長めにとらなければなりません。
温度の影響も同じ向きで理解できます。水温が低いほど増殖はさらに遅くなるので、冬場に硝化を保つには、夏よりも汚泥を長く留めておく必要があります。「寒いときほど汚泥を大事に抱えておく」と考えると迷いません。
なお、水が槽を通り抜ける時間(滞留時間)とSRTは別物です。水は数時間で出ていきますが、汚泥は返送によって何日も系内を回り続けます。硝化菌の生死を決めるのは後者のほうです。
覚え方
- 遅い菌を飼うなら長く置く。硝化を狙うときはSRTを長めに、低水温ならさらに長めに。
- SRTを決めるのは余剰汚泥の引き抜き量。引き抜けば短く、絞れば長い。
- 水の滞留時間と汚泥の滞留時間は別。水は数時間、汚泥は数日以上。
- 溶存酸素が急に上がったら喜ばない。微生物が酸素を使っていないサインを疑う。
- 返送率を上げれば槽内の汚泥濃度は上がる。入れる汚泥の量が増えるからと押さえる。
理解度チェック
硝化を進めたいとき、汚泥の滞留日数を長くとるのはなぜですか。
アンモニアを酸化する細菌は増殖が遅いためです。汚泥を早く引き抜くと、ふえる速さが追いつかず槽内から洗い出されてしまいます。
曝気槽内の溶存酸素が急上昇したとき、まず何を疑いますか。
微生物の活性が落ちて酸素を消費しなくなったことを疑います。有毒物質の流入や急激なpH変動などが背景にあることが多く、処理がよくなった証拠ではありません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月