平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問19を解説|後段で有機酸が減ればpHは上がる
平成29年度 汚水処理特論 問19は、嫌気性の処理を前後2つの槽に分けた方式について問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
この方式は、有機酸をつくる菌と、その有機酸を食べてメタンにする菌を、あえて別々の槽に住まわせるという設計です。したがって前の槽と後ろの槽では、水素イオン濃度の動く向きが正反対になります。引っかけはそこにあり、後ろの槽で酸が減っていくのに、あたかも酸性側へ進むかのように書かれた記述が1つ紛れています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 前の槽の役目は、流れ込んだ大きな有機物を酢酸やプロピオン酸などの低級脂肪酸まで崩すことです。ここまでが下ごしらえにあたります。 |
| (2) | ○(正しい) | 酸がたまると水はどんどん酸性へ振れ、酸をつくる菌自身の働きまで鈍ります。アルカリを補って行きすぎを止めます。 |
| (3) | ○(正しい) | 後ろの槽では有機物がメタンと二酸化炭素という気体に変わって抜けていきます。液の中に有機物が残る形ではありません。 |
| (4) | ×(誤り) | 後ろの槽は酸を消費する側です。有機酸が順調に分解されれば酸の量は減るので、水素イオン濃度は下がり、pHは中性側へ戻ります。これが正解の肢です。 |
| (5) | ○(正しい) | メタンをつくる菌は温度の変化に弱く、適した温度域から外れると活性が大きく落ちます。加温と保温の管理が欠かせません。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
嫌気性の処理は、ひと続きに見えて中身は役割の違う2段階でできています。前半で有機物が有機酸に崩れ、後半でその有機酸がメタンと二酸化炭素に変えられます。酸を出す側と、酸を食べる側と言い換えると分かりやすくなります。
したがってpHの動きは前後で逆向きです。酸を出す側では酸がたまってpHが下がり、酸を食べる側では酸が消えてpHが戻ります。もし後ろの槽でpHが下がり続けているなら、それは有機酸が分解されずに溜まりつつあるという異常のサインです。正常な状態を述べた記述として「分解が進んだ結果pHが下がる」と読むのは、原因と結果がつながっていません。
そもそも2つに分ける理由も、この性質の差にあります。酸をつくる菌は速くふえて酸性にも比較的強いのに対し、メタンをつくる菌はふえるのが遅く、中性付近から外れると弱ります。同じ槽に押し込めると、負荷が上がったときに酸の生成が先行し、たまった酸がメタン生成菌を痛めつけて処理全体が止まる(酸敗)という事故が起きます。槽を分ければ、前段は酸性寄り、後段は中性付近と、それぞれに合った環境を別々に用意できます。
運転管理でも、後段のpHと有機酸の濃度は最重要の監視項目です。pHが落ち始めたら、投入する量を絞るかアルカリを補って立て直します。
覚え方
- 前は酸をつくる、後ろは酸を食べる。前段はpHが下がり、後段はpHが戻る。
- 後段でpHが下がったら異常。酸がたまってメタン生成が止まりかけている合図。
- 2槽に分ける理由は菌の性質差。速い菌と遅い菌、酸に強い菌と弱い菌を別の部屋へ。
- 後段の生成物は液ではなく気体。メタンと二酸化炭素で出ていくので汚泥が少ない。
- 嫌気処理の管理三点セットは温度・pH・有機酸濃度。
理解度チェック
嫌気性の処理を、酸をつくる槽とメタンをつくる槽に分けるのはなぜですか。
担い手の菌が増殖速度もpHの適域も違うためです。ひとつの槽にまとめると、負荷が上がったときに酸が先に溜まり、メタン生成菌が阻害されて処理が止まりやすくなります。
メタン発酵側でpHの低下が続いているとき、何が起きていると考えられますか。
有機酸の分解が追いつかず、酸が蓄積している状態です。投入負荷を下げる、アルカリを補うなどで立て直さないと、発酵が完全に止まってしまいます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月