平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問14を解説|硝化に必要な酸素量の比(亜硝酸止まりと硝酸まで)
平成29年度 汚水処理特論 問14は、アンモニウムイオンの酸化を途中の亜硝酸で止める場合と、最後の硝酸まで進める場合とで、要る酸素が何倍違うかを求める計算問題です。正しいものを選びます。
この問題のポイント
硝化は一段の反応ではありません。アンモニウムイオンから亜硝酸イオンへ移る段階と、そこから硝酸イオンへ移る段階の二段構えで進みます。担う菌の種類も別です。この問題は、それぞれの段階で酸素が何モル要るかを書き下し、片方だけの量と二つ合わせた量の比を取るだけで片が付きます。分かれ目は反応式を係数まで正しく組めるかで、暗記した数値をそのまま比として答えてしまうと外します。並んだ選択肢には、比ではなく片方の段階の酸素量そのものにあたる値が混ぜてあります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 1.25。正しい比より小さく、二段目の酸素量を過小に見ると出てくる側の値です。 |
| (2) | ×(誤り) | 約1.29。正解に近い値ですが、酸素のモル数の比を約分してもこの分数にはなりません。 |
| (3) | ○(正しい) | 2モル÷1.5モル=4/3。約1.33倍です。これが正解です。 |
| (4) | ×(誤り) | 1.5。亜硝酸イオンまでに要する酸素のモル数そのもので、二つの量の比ではありません。 |
| (5) | ×(誤り) | 2。硝酸イオンまでに要する酸素のモル数そのもので、こちらも比ではありません。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 一段目の反応式 | NH4+ + 1.5 O2 → NO2- + H2O + 2 H+。窒素1モルあたり酸素は1.5モルです。 |
| 手順2 二段目の反応式 | NO2- + 0.5 O2 → NO3-。酸素原子が1個増えるだけなので0.5モルです。 |
| 手順3 硝酸までの合計 | 1.5+0.5=2モル。まとめるとNH4+ + 2 O2 → NO3- + H2O + 2 H+となります。 |
| 手順4 比を取る | 2 ÷ 1.5 = 4/3。硝酸まで進める場合は約1.33倍の酸素が要ります。 |
ここが分かれ目
係数の組み立てで確認したいのは、酸化数がどれだけ動いたかです。アンモニウムイオンの窒素はマイナス3、亜硝酸イオンではプラス3、硝酸イオンではプラス5にあたります。一段目で6つ、二段目で2つの電子が動くので、必要な酸素は6:2=3:1、つまり1.5モルと0.5モルという配分になります。二段目を一段目と同じ重さだと感じてしまうと、比が2倍近い値にふくらみます。実際には仕上げの一段は軽く、全体の四分の一しか占めません。
もうひとつの落とし穴は、求められているのが「量」ではなく「量の比」だという読み違えです。選択肢には片方の段階の酸素量そのものにあたる数が置いてあるので、計算の途中で出た数をそのまま選ぶと引っかかります。答えは1より大きく、しかも二段目の分だけ増えるのだから2倍には届かない、という見当を先に付けておくと、選べる範囲が一気に狭まります。
実務でこの比が効いてくるのは送風量の見積もりです。窒素を完全に硝酸まで持っていく運転は、亜硝酸で止める運転よりも余分に空気を吹き込む必要があり、その差がそのまま動力費になります。逆に言えば、亜硝酸の段階で止めてそのまま脱窒へ回せれば、酸素も後段の水素供与体も節約できるという発想が成り立ちます。近年の窒素処理でこの短絡経路が注目されるのは、この量論の差が出発点です。
覚え方
- 硝化は二段。亜硝酸まで1.5モル、硝酸まで合計2モル(窒素1モルあたり)。
- 比は2÷1.5=4/3。仕上げの一段は全体の四分の一しかない。
- 酸化数はマイナス3→プラス3→プラス5。動く電子は6つと2つで3対1。
- 問われているのが量か比かを最初に確かめる。選択肢に途中の量が混ぜてある。
- 亜硝酸で止めれば酸素も水素供与体も節約できる。量論が省エネの根拠。
理解度チェック
アンモニウムイオンが亜硝酸イオンへ変わるまでに要る酸素は、窒素1モルあたり何モルですか。
1.5モルです。窒素の酸化数がマイナス3からプラス3へ動き、電子が6つ移動するためです。続いて硝酸イオンまで進めるには、さらに0.5モルが加わります。
亜硝酸の段階で酸化を止められると、なぜ有利になりますか。
送り込む酸素が四分の一減り、後段で加える水素供与体も少なくて済むからです。硝酸まで持ち上げてから還元して戻すより、途中で折り返すほうが総量として無駄が小さくなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月