平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問15を解説|循環式硝化脱窒素法(循環量が脱窒率の上限を決める)
平成29年度 汚水処理特論 問15は、硝化した液を前段へ戻して窒素を抜く方式の槽の並びと、それぞれの槽の役目についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
示された流れ図では、無酸素の槽と好気の槽が前後に並び、その後ろにもう一段の無酸素槽と仕上げの曝気槽が続きます。各槽の役目を述べた記述は、前段が原水の有機物を還元剤に使うこと、後段が取り残しを片付けること、薬剤を足すこと、最後に曝気して残りを整えることと、いずれも素直に読めます。分かれ目は戻す液の量をどれくらいに取るかを述べた記述です。この方式の窒素除去は「戻した分しか抜けない」という構造をしているので、戻す割合が小さければそれだけで頭打ちになります。数字の大小の感覚が問われる、珍しいタイプの引っかけです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 前段の無酸素槽を先に置く狙いは、原水の有機物をそのまま還元剤として使い切ることにあります。 |
| (2) | ×(誤り) | 戻す量はごく一部ではなく大半で、原水量に対して同等かそれ以上に取ります。これが正解です。 |
| (3) | ○(正しい) | 前段で戻し切れなかった窒素の酸化物を、後ろのもう一段でつかまえる構えです。 |
| (4) | ○(正しい) | 後段には有機物がほとんど残っていないため、還元剤を外から加えます。扱いやすいアルコール類が定番です。 |
| (5) | ○(正しい) | 加えた還元剤の余りを酸化して片付けるとともに、汚泥から気泡を抜いて沈みやすくする役目があります。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
この方式の骨組みは単純です。硝化槽で作られた窒素の酸化物は、前段の無酸素槽へ戻された分だけが窒素ガスに変えられ、戻されなかった分は下流へ流れていきます。したがって前段だけで見た窒素の除去率は、循環した量が全体に占める割合そのもので頭打ちになります。戻す量が全体の一割か二割しかなければ、前段で抜ける窒素も一割か二割にとどまり、方式として成り立ちません。実際の設計では原水の量と同等か、その数倍にあたる量を戻します。
循環量を増やすほど除去率が上がるのなら、いくらでも増やせばよいと思えますが、そうはいきません。多量に戻すと硝化槽から溶存酸素を持ち込んでしまい、前段の無酸素状態が崩れて還元反応が鈍ります。ポンプの動力費も比例して重くなります。そのため循環量には実用上の上限があり、前段の循環だけでは窒素を抜き切れないのがふつうです。だからこそ後ろにもう一段の無酸素槽を置き、そこに還元剤を加えて残りを片付ける構えになっています。
各槽の役目を通しで整理しておきましょう。前段の無酸素槽は原水の有機物を還元剤として使うので薬剤が要らず、費用の面で有利です。硝化槽ではアンモニアが酸化されますが、窒素はまだ水の中に残ったままで、抜けたわけではありません。後段の無酸素槽は前段で取りこぼした分の受け皿で、ここでは還元剤を外から入れます。仕上げの曝気槽は、加えすぎた還元剤が処理水の有機物として出ていくのを防ぎ、あわせて汚泥に付いた窒素の気泡を抜いて沈殿槽での分離を助けます。
覚え方
- 戻した分しか窒素は抜けない。前段の除去率の上限は循環した割合そのもの。
- だから循環量は原水量と同等以上。一割二割では方式が成り立たない。
- 循環を増やしすぎると溶存酸素を持ち込み、動力も食う。上限がある理由。
- 前段の還元剤は原水の有機物、後段の還元剤は外から添加。費用の差はここ。
- 最後の曝気は、余った還元剤の始末と汚泥の脱気の二役。
理解度チェック
前段の無酸素槽で抜ける窒素の割合は、何によって頭打ちになりますか。
硝化した液を戻した割合です。戻さなかった分の窒素の酸化物はそのまま下流へ流れるため、循環量が小さいと前段の除去率もそれ以上には上がりません。
後段の無酸素槽に還元剤を加えるのはなぜですか。
そこまで来た水には有機物がほとんど残っていないからです。前段と硝化槽で有機物が消費され尽くしているため、残った窒素の酸化物を還元するには外から炭素源を補う必要があります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月