平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問13を解説|嫌気処理法(酸素がなければ窒素はアンモニアどまり)
平成29年度 汚水処理特論 問13は、酸素を断った槽で微生物に有機物を分解させる方式についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
並んだ記述のうち、運転に適したpHの幅、汚泥の出方が少ないという特徴、途中でできる有機酸の一部が反応を止めてしまうこと、高い負荷を受けられる装置の理屈は、どれも嫌気処理の基本として押さえておきたい内容です。分かれ目はもっと手前にあって、酸素のない場所で窒素分がどこまで変化できるかという一点です。窒素の形が変わる話は好気側の硝化とセットで覚えている人が多く、条件を入れ替えて出されると素通りしてしまいます。酸化は酸素を受け取る相手がいてはじめて成り立つ、という原則に立ち返れば迷いません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 酸素のない槽では、有機物に含まれる窒素分はアンモニアの形にほどけるところで止まります。これが正解です。 |
| (2) | ○(正しい) | メタンを作る菌は中性付近を好むため、運転はおおむね中性の幅に保ちます。 |
| (3) | ○(正しい) | 取り出せるエネルギーが乏しいぶん菌はゆっくりしか増えず、抜く汚泥の量も少なくて済みます。 |
| (4) | ○(正しい) | 炭素数3の有機酸がたまるとメタン生成側が追いつかなくなり、反応が滞ります。 |
| (5) | ○(正しい) | 粒状に固まった汚泥を槽内に高濃度で留め置けるため、小さな槽で大きな負荷をさばけます。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
硝酸イオンは、窒素が最も酸化された形です。そこまで持ち上げるには酸素を渡す相手が要り、その役目を担うのが好気槽に吹き込む空気と、そこで働く硝化菌にほかなりません。酸素を断ってある発酵槽には、窒素を酸化する経路そのものが存在しません。したがって、たんぱく質のような有機性の窒素は分解されてもアンモニアの形にほどけるまでで、それ以上は進みません。むしろ嫌気処理では槽の中のアンモニアが増えていくのがふつうで、これが後段の負担になります。
この点は装置の組み方にも直結します。嫌気処理を通した水は有機物こそ大きく減っていますが、窒素はアンモニアの形で残ったままです。放流基準に窒素がかかる場合は、この後ろに好気の硝化と無酸素の脱窒を置いて処理を続ける必要があります。嫌気処理だけで窒素まで片付くと考えるのは危険で、実際の設計ではむしろ窒素対策が課題になります。
ほかの記述は嫌気処理の性格をよく表しています。反応は酸を作る菌とメタンを作る菌の連係で進み、後者は中性付近から外れると弱るので、pHの管理が要になります。酸素呼吸に比べて取り出せるエネルギーが小さいため菌はゆっくりしか増えず、その裏返しとして抜くべき汚泥が少ない、汚泥処分の費用が軽いという利点が生まれます。一方で中間産物の有機酸、とりわけ酢酸より炭素数の多いものがたまると反応が止まりやすく、負荷を急に上げられないという弱点も同じ理由から来ています。粒状に育てた汚泥を槽内に留め置く方式が高い負荷に耐えられるのも、増えにくい菌をいかに逃がさず抱えるかという発想の産物です。
覚え方
- 酸化には酸素の受け手が要る。酸素を断った槽で硝酸まで進むことはない。
- 嫌気処理を出た水の窒素はアンモニアのまま。窒素除去は別に後段が要る。
- メタンを作る菌は中性付近が好き。酸がたまってpHが下がると止まる。
- ゆっくり増える=余剰汚泥が少ないという長所と、負荷を急に上げられない短所は表裏一体。
- 粒状汚泥を槽内に留めるほど、小さい槽で高い負荷をさばける。
理解度チェック
嫌気の発酵槽では、有機物に含まれる窒素分はどの形になりますか。
アンモニアの形になります。硝酸まで酸化するには酸素を受け渡す相手と硝化菌が必要で、酸素を断った槽にはその経路がありません。処理水の窒素対策は後段で行います。
嫌気処理で引き抜く余剰汚泥が少なくて済むのはなぜですか。
菌が取り出せるエネルギーが小さく、増殖が遅いからです。同じ量の有機物を分解しても新しくできる菌体が少ないため、引き抜く汚泥が減ります。反面、負荷変動や有機酸の蓄積には弱くなります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月