平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問12を解説|活性汚泥の増殖段階(標準法はフロックを作る段階)
平成29年度 汚水処理特論 問12は、汚泥中の微生物が餌の多寡に応じてどう増え、どう性質を変えるかについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
微生物の増え方には段階があり、餌が潤沢な段階から餌が尽きて自分の体を削る段階まで、順に性質が移り変わります。並んだ記述のうち、段階の名前と定義、餌と汚泥の量的なつり合いが増え方を決めること、餌が尽きた段階で汚泥がほどけていくことは、どれも素直に読めます。分かれ目はふだんの処理場が動いている段階がどこかを述べた記述です。運転で最も大事なのは沈殿池で泥がきちんと沈むことなので、菌がばらばらのまま勢いよく増える段階に置いていては処理が成り立ちません。段階の名前だけでなく、その段階の汚泥が沈むのか沈まないのかをセットで覚えているかが問われています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 餌の量と菌の量の比が増え方を左右します。一匹あたりの取り分が多いほど勢いよく増えます。 |
| (2) | ○(正しい) | 勢いよく増える段階、伸びが鈍る段階、自らを削る段階という区分けは教科書どおりの整理です。 |
| (3) | ×(誤り) | ふだんの運転で汚泥が置かれるのは増殖の勢いが鈍った段階で、菌はばらばらではなく塊を作っています。これが正解です。 |
| (4) | ○(正しい) | 餌が尽きると体内の蓄えを取り崩し、やがて自分自身を分解して塊がほどけていきます。 |
| (5) | ○(正しい) | 長く曝気し続ける方式は餌に対して汚泥が過剰な状態なので、自らを削る段階に落ち着きます。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
誤りは二か所に重なっています。ひとつは運転中の汚泥を、餌が有り余って倍々に増えていく段階に置いている点。もうひとつは菌がばらばらに散った状態で増えるとしている点です。ふつうの活性汚泥処理では、槽の中に汚泥をたっぷり抱えたうえで汚水を通すので、菌一匹あたりの取り分はむしろ乏しく、増殖の勢いは鈍っています。この段階の菌は粘性の物質を出して互いにくっつき、目に見える大きさの塊を作ります。
なぜそこを狙うのかというと、沈殿池で固液分離ができなければ処理が成立しないからです。菌が分散したままでは沈まず、そのまま処理水と一緒に流れ出て、放流水の濁りと有機物負荷になります。餌をどんどん与えて増殖を最大にする運転は、生産という意味では効率がよくても、水処理としては失格です。増殖が速い状態を「良い状態」と読み替えてしまうのが、この選択肢の狙いだと言えます。
三つの段階と汚泥の見た目を結び付けておくと迷いません。餌が豊富な段階は菌が分散し、増える速さは最大でも沈みにくい状態です。餌が乏しくなる段階では増殖が鈍る代わりに塊が育ち、沈みやすくなります。餌がまったくなくなる段階では蓄えを使い果たして自己分解が進み、塊は細かくほどけていきます。ふだんの運転は真ん中を、長く曝気する方式は最後の段階を狙っている、という並びで整理できます。
覚え方
- 増殖の三段階=勢いよく増える/伸びが鈍る/自らを削る。標準的な運転は真ん中。
- 増える速さと沈みやすさは逆向き。速く増える汚泥は分散して沈まない。
- 塊を作るのは餌が乏しくなってから。だから沈殿池が機能する。
- 長時間曝気する方式は餌が枯れた段階=余剰汚泥が少ない代わりに送風が長い。
- 餌と菌の量的なつり合い(F/M比)が高いほど増殖は速く、低いほど遅い。
理解度チェック
標準的な活性汚泥法では、汚泥は増殖の三段階のうちどこに置かれていますか。
増殖の勢いが鈍った段階です。菌が互いにくっついて塊を作るため沈殿池で分離でき、処理水を澄ませることができます。勢いよく増える段階では菌が分散して沈まなくなります。
餌が尽きた段階の汚泥には、どのような変化が起こりますか。
体内の蓄えを消費し、やがて自己分解して塊がほどけます。汚泥量そのものは減っていくため余剰汚泥は少なくなりますが、細かくほどけた分は沈みにくくなります。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月