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平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問4を解説|2価の鉄を3価にするのに窒素は使えない

平成29年度 汚水処理特論 問4は、金属イオンをアルカリで沈めて分離する処理の性質を並べた正誤問題です。誤っているものを選びます。

この問題のポイント

金属を溶かし込んだ排水の始末は、水酸化物としての溶けにくさを利用して固体に変え、沈めて分ける操作が土台になります。ここで押さえるべきは、金属ごとに沈み始めるpHが違うこと、そして一部の金属はアルカリを入れすぎると再び溶けてしまうことの二つです。もう一つ、鉄のように価数が変わる金属では沈みやすい価数に変えてから中和するという前処理が入ります。この前処理で何を吹き込むのかが、この問題の分かれ目です。吹き込むガスの役割を取り違えると、まったく逆の働きをする気体を選んでしまいます。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(3)(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)○(正しい)溶けにくさの度合いは金属ごとに固有で、沈殿が始まるpHの違いはここから生まれます。
(2)○(正しい)3価の鉄はとりわけ溶けにくく、まだ酸性のうちから水酸化物として析出します。
(3)×(誤り)吹き込むべきは酸素を含む空気です。窒素では価数を変えられません。これが正解です。
(4)○(正しい)挙げられた四つはいずれも、酸にもアルカリにも溶ける性質を示します。
(5)○(正しい)溶けにくさが底を打つpHが金属ごとにあり、そこを外すと溶け残りが増えます。

選択肢(3)のポイント(ここが誤り)

鋼材の表面から酸化被膜を酸で溶かし落とす工程からは、溶け出した鉄が2価のイオンとして大量に出てきます。2価のままアルカリで中和しても水酸化物にはなりますが、この形は溶けにくさの点で3価に大きく劣り、中性付近では溶け残りが出ますし、生じた固体も空気に触れるとゆっくり酸化して水を再び濁らせます。そこで中和と並行して2価から3価へ酸化する操作を組み込みます。3価の水酸化物は溶けにくさが桁違いで、酸性側から析出し、沈みやすい塊にもなります。

この酸化に使うのは空気中の酸素です。槽の底からブロワで空気を送り込み、水面をかき混ぜて酸素を溶かし込みます。必要なら過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤を加えることもあります。ところが窒素は化学的にきわめて不活性で、水に吹き込んでも金属を酸化する力を持ちません。それどころか、溶けている酸素を追い出して酸化を妨げる方向にはたらきます。窒素封入は、酸化させたくない場面、たとえば試料の保存や配管内の酸化防止に使う手であって、鉄を酸化したい場面で選ぶ気体ではありません。

あわせて、アルカリの入れすぎにも注意が要ります。アルミニウムや亜鉛のような金属は、アルカリが過剰になると錯イオンとして再び溶け出し、処理水の金属濃度がかえって上がります。それぞれの金属で溶けにくさが底になるpHを狙って中和を止めるのが要点で、複数の金属が混ざる排水では、すべての金属が同時に最低になるpHは存在しないため、狙い所を決めるか二段で処理することになります。

覚え方

  • 酸化したいなら空気、酸化させたくないなら窒素。吹き込むガスは目的で決まる。
  • 鉄は3価へ変えてから中和。3価の水酸化物は酸性側から沈むほど溶けにくい。
  • 両性水酸化物はアルミニウム・鉛・亜鉛・クロム。アルカリ過剰で再溶解する。
  • 溶解度がV字の底になるpHは金属ごとに違う。混合排水では狙い所を決めて止める。
  • 溶解度積が小さい金属ほど、低いpHから沈み始める。

理解度チェック

Q.

酸洗い排水に多い2価の鉄を処理するとき、中和と並行して何を行いますか。

空気を送り込んで2価を3価へ酸化します。3価の水酸化物のほうが格段に溶けにくく、酸性側から析出して沈みやすい塊になるためです。窒素は不活性で酸化する力がなく、むしろ溶存酸素を追い出してしまうので、この用途には使えません。

Q.

両性の水酸化物になる金属では、アルカリの入れすぎがなぜ問題になりますか。

過剰なアルカリの中で錯イオンとして再び溶け出すためです。溶解度はあるpHで最も低くなり、そこを越えて中和を続けると処理水中の金属濃度がかえって上がります。アルミニウム、鉛、亜鉛、クロムがこの性質を示します。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF