平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問3を解説|溶けたイオンの窒素は凝集では落ちない
平成29年度 汚水処理特論 問3は、凝集沈殿法がどこまで守備範囲かを問う問題です。この方法ではほとんど落ちないものを選びます。
この問題のポイント
凝集沈殿は、水中に散らばって沈まないでいる細かなものを、薬品の力でくっつけて大きな塊にし、重さで沈めてしまう方法です。したがって効くかどうかの分かれ目は、対象が固体の粒として存在できるかどうか、あるいは薬品と結びついて水に溶けない塩に変わるかどうかの一点にあります。塊にする相手がいない、つまり水分子の間に完全に溶け込んで安定しているイオンには、この方法は無力です。五つのうち四つは粒として集められるか不溶性の塩に変えられるもので、残る一つだけがどちらにも当てはまりません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(凝集沈殿では落とせないもの)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 凝集沈殿での除去 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(落とせない) | 溶けたイオンのままで、凝集剤と不溶性の塩を作らないため塊になりません。これが正解です。 |
| (2) | ○(可能) | アルミニウム塩や鉄塩、カルシウム塩と結びついて水に溶けない塩に変わり、フロックとともに沈みます。 |
| (3) | ○(可能) | 単独ではほとんど沈まない大きさですが、凝集させて塊にすれば沈降します。 |
| (4) | ○(可能) | 色のもとがコロイドとして漂っているなら、フロックに取り込まれて脱色できます。 |
| (5) | ○(可能) | コロイドとして存在する有機物は塊に巻き込まれて除かれ、その分だけ酸素消費量が下がります。 |
選択肢(1)のポイント(ここが落とせない相手)
凝集沈殿が働くには二つの経路のどちらかが要ります。一つは、電気的な反発で漂い続けている微細な粒の反発を打ち消し、互いに寄り集まらせて重い塊に育てる経路。もう一つは、加えた金属イオンと相手のイオンが結びついて水に溶けない塩を作り、それが沈む経路です。りん酸のイオンは後者にあたり、アルミニウムや鉄、カルシウムと結んで固体に変わります。ところが硝酸のイオンは、これらの金属と結んでも水によく溶ける塩にしかなりません。固体になれない相手は、どれだけ薬品を入れても沈殿として取り出せないのです。
ではこの窒素をどう除くのか。実務では生物の力を借りるのが基本で、酸素のない条件下で微生物に窒素ガスへ還元させて大気へ返します。ほかにイオン交換樹脂で捕まえる方法、逆浸透や電気透析で膜の向こうへ追いやる方法もありますが、いずれも凝集とはまったく別の原理です。「窒素だから凝集で落とせるはず」と考えるのが最大の落とし穴で、同じ窒素でも有機物やコロイドに取り込まれた分は塊と一緒に沈む一方、イオンとして溶けた分は素通りします。
色や酸素消費量についての記述が正しいのも、同じ物差しで説明できます。これらは物質名ではなく水の性質を表す指標ですから、その原因がコロイド由来なら凝集で下がり、完全に溶けた小さな分子由来なら下がりません。問題文がわざわざ原因を限定しているのは、この区別を確かめるためです。
覚え方
- 凝集で落とせるのは、粒にできるものと不溶性の塩になるものだけ。
- りんは金属と結んで固体になる。硝酸のイオンは結んでも溶けたまま。
- 溶けた窒素は生物による還元、イオン交換、膜が担当。凝集の仕事ではない。
- 色や酸素消費量は「原因がコロイドか溶存か」で凝集の効き目が分かれる。
- マイクロメートルより小さい粒は単独では沈まない。塊に育てて初めて沈む。
理解度チェック
凝集沈殿法で除去できるかどうかは、何によって決まりますか。
対象を固体として取り出せるかどうかです。電気的な反発で漂う微細な粒なら反発を消して塊に育てられますし、金属イオンと結んで水に溶けない塩になるものなら沈殿として分けられます。どちらにも当てはまらない溶存イオンは残ります。
溶けたイオンとして存在する窒素を除くには、どのような方法がありますか。
中心となるのは生物による脱窒で、酸素のない条件下の微生物に窒素ガスまで還元させて水中から追い出します。ほかにイオン交換樹脂に捕捉する方法や、逆浸透・電気透析で分離する方法もあります。いずれも凝集沈殿とは原理が異なります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月