平成30年度 公害防止管理者 公害総論 問8を解説|排出基準が定められていない大気汚染物質(ニッケル)
平成30年度 公害総論 問8は、大気汚染防止法による排出基準の対象物質に関する問題です。挙げられた物質のうち排出基準が定められていないものを選びます。
この問題のポイント
この問題は、大気汚染防止法がどの物質に濃度の基準をかけているかという、規制の全体像を問うものです。分かれ目は、「対策の対象になっている物質」と「排出基準が定められている物質」は別物だと切り分けられるかどうかです。名前を聞いたことがある物質を、そのまま基準のある物質と思い込ませる作りになっています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 排出基準 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | 定めあり | ばい煙の一つで、ばい煙発生施設の種類・規模ごとに排出基準が定められています。 |
| (2) | 定めあり | ばい煙のうちの有害物質に位置づけられており、施設ごとに排出基準が定められています。 |
| (3) | 定めなし | ニッケル化合物は有害大気汚染物質のうち優先取組物質に挙げられていますが、排出基準は定められていません。これが正解です。 |
| (4) | 定めあり | 揮発性有機化合物排出施設を対象に、排出口での濃度の基準が定められています。 |
| (5) | 定めあり | 水銀排出施設を対象に排出基準が定められています(水銀に関する水俣条約を受けた規制)。 |
選択肢(3)のポイント(ここが答え)
ニッケル化合物は、健康影響のおそれがある物質として有害大気汚染物質の優先取組物質に選ばれています。しかしこれは「優先して知見の集積とリスク低減を進める物質」という位置づけであって、施設ごとの排出基準が設定されているわけではありません。有害大気汚染物質の枠組みは、事業者の自主的な排出抑制と行政の調査・監視を柱に組み立てられており、ばい煙のような一律の濃度規制とは別系統です。
この点を「名前が挙がっている=基準がある」と読み替えてしまうのが、この問題の落とし穴です。ばい煙の有害物質の顔ぶれを覚えていれば、ニッケルがそこに入らないことはすぐに判断できます。
覚え方
- 大気汚染防止法が排出口の濃度基準を定めるのはばい煙・揮発性有機化合物・水銀の3系統。粉じんは施設の構造や管理の基準・敷地境界の基準で規制。
- ばい煙の有害物質は5グループ=カドミウム/塩素・塩化水素/ふっ素・ふっ化水素・ふっ化けい素/鉛/窒素酸化物。ニッケルは含まれない。
- 有害大気汚染物質は「優先して取り組む物質」であって「基準のある物質」ではない。取組の枠組みと規制の枠組みを分けて記憶する。
理解度チェック
大気汚染防止法で排出口の濃度基準が定められている物質の系統は?
ばい煙(ばいじんと有害物質)、揮発性有機化合物、水銀の3系統です。粉じんは濃度の排出基準ではなく、施設の構造・使用・管理の基準や敷地境界の基準で規制されます。
ニッケル化合物は大気汚染防止法でどう扱われているか。
有害大気汚染物質のうち優先取組物質に挙げられています。ただし排出基準は定められておらず、事業者の自主的な排出抑制と行政の調査・監視で対応する枠組みです。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 公害総論 問題」(公式PDF)
- 大気汚染防止法/大気汚染防止法施行令
- 環境省「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質」及び優先取組物質
※ この記事の確認日:2026年7月