平成29年度 公害防止管理者 ダイオキシン類概論 問14を解説|半数致死量の動物種差
平成29年度 ダイオキシン類概論 問14は、毒性の強さが仲間ごとに、また動物ごとに大きく違うことを述べた文章について、下線を引かれた5か所から誤りを1つ選ぶ正誤問題です。誤りのある箇所を選びます。
この問題のポイント
この文章は二つの段からできています。前段は毒性が仲間ごとに、そして動物ごとに大きく異なるという一般論、後段は具体的な二種類の動物での数値です。下線は前段に三つ、後段に二つ入っています。前段の三つは異性体がなぜ多数できるのかという構造の話で、いずれも教科書どおりです。したがって勝負は後段の数値になります。判断の決め手は、前段で宣言された「大きな差」を、後段の数値が裏づけているかという一点です。数値そのものを暗記していなくても、文章の中でつじつまが合うかどうかで見抜けます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤りのある箇所)
各選択肢の正誤
| 下線 | 正誤 | 読み解き |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | いくつ結び付いているかは、仲間を分ける第一の軸です。同族体を分ける物差しにあたります。 |
| (2) | ○(正しい) | 同じ個数でも、どこに結び付くかで別の物質になります。これが第二の軸です。 |
| (3) | ○(正しい) | 二つの軸を掛け合わせると、それぞれの骨格で多数の仲間が生まれます。 |
| (4) | ○(正しい) | 最も感受性が高い動物での値は、体重1キログラムあたりマイクログラムという桁に収まります。 |
| (5) | ×(誤り) | 抵抗性の高い動物での値は、これより三桁ほど大きい水準です。示された値では桁が足りません。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
半数致死量とは、その量を与えたときに半数が死に至る量のことで、小さいほど毒性が強いことを意味します。ダイオキシン類で有名なのは、この値が動物によって極端に違うことです。文献で最も感受性が高いとされるのがモルモットで、体重1キログラムあたりマイクログラムという、ごく小さい桁の値になります。一方、最も抵抗性が高いとされるのがハムスターで、こちらは千から数千マイクログラムという、はるかに大きい桁の値が報告されています。両者の開きは数千倍に達し、毒性学の教科書で種差の代表例として引き合いに出されるほどです。
この肢が示している値では、二つの動物の差はごくわずかにしかなりません。ところが文章の前段は、動物ごとの差が大きいと宣言しています。宣言と数値が食い違っているので、数値を覚えていなくても矛盾に気づけます。下線を引いた正誤問題では、こうした文章の内部での整合が最初に確かめるべき手がかりになります。とくに「大きく異なる」「著しい」といった強い形容が置かれているときは、その後に続く数値がその形容に見合っているかを必ず点検してください。
なぜここまで種差が大きくなるのかも押さえておくと、記憶が安定します。ダイオキシン類の毒性は、細胞の中にある受け皿にはまることで引き起こされます。この受け皿の形や量、そして毒性が出るまでの体内での処理の仕方が動物によって違うため、同じ量を与えても反応がまるで変わります。動物実験の結果をそのまま人に当てはめられないのはこのためで、耐容一日摂取量に大きな安全のゆとりが取られている理由にもつながります。この問題は、単なる数値の暗記ではなく、リスク評価の考え方そのものを問うています。
覚え方
- 半数致死量の値は小さいほど強い毒。数字そのものより桁で覚える。
- 最も弱いのがモルモット、最も強いのがハムスター。差は数千倍。
- 種差が大きいのは、受け皿の形や量、体内での処理が動物ごとに違うから。
- 差が大きいと書かれていたら、続く数値がその開きを裏づけているかを確かめる。
- 仲間を分ける軸は「いくつ」と「どこに」の二つ。掛け合わせで多数になる。
理解度チェック
モルモットとハムスターでは、半数致死量にどれくらいの開きがありますか。
数千倍です。モルモットが最も感受性が高く、ハムスターが最も抵抗性が高い動物として知られています。
動物実験の結果を人にそのまま当てはめられないのは、なぜですか。
毒性の引き金となる受け皿の性質や体内での処理が動物ごとに違うからです。だから指標を決めるときは大きな安全のゆとりを取ります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類概論 問題・正解」(公式PDF)
- 米国環境保護庁 ダイオキシン健康評価文書ほか、動物種別の急性毒性についての文献値
※ この記事の確認日:2026年7月