平成29年度 公害防止管理者 ダイオキシン類概論 問12を解説|焼却炉内での生成場所
平成29年度 ダイオキシン類概論 問12は、ものを燃やす過程でダイオキシン類がどこで、どんな条件のもとに生じるのかを問う正誤問題です。誤りのある記述を選びます。
この問題のポイント
炉の中を、温度の高い区画と、そこを出て冷えていく区画に分けて考えるのが出発点です。二つの区画では起きる現象が正反対で、片方は壊す場、もう片方は組み立て直す場になります。設問は、この二つの場の話に加えて、生成に何が要るのか、塩素の出どころで違いが出るのかへと広がります。引っかけの核心は、高温の区画で何が起きているかという一点です。高温だから激しく反応が進む、という素朴なイメージのままだと、方向を逆に読んでしまいます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 燃やしている区画と、そこを出て温度が下がっていく区画の二か所が、生成の舞台として挙げられます。 |
| (2) | ×(誤り) | 高温の区画では熱によって壊されるほうが優勢です。できたものがそのまま積み上がる、という向きにはなりません。 |
| (3) | ○(正しい) | 塩素の供給元と炭素の供給元が同じ場に居合わせることが、生成が起こるための前提になります。 |
| (4) | ○(正しい) | 塩素の出どころには、無機の形をとるもの(塩の類)と、有機の形をとるもの(樹脂の類)の両方があります。 |
| (5) | ○(正しい) | 炎の中ではどちらの形も塩素の原子まで分解されるため、供給元としての差は小さいと整理されています。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
高温の区画で起きているのは、生成と分解の両方です。前駆体から骨格が組み上がる反応も進みますが、それ以上にできあがった分子が熱で壊される反応が強く働きます。差し引きすると分解のほうが優勢になるため、この区画を通ったガスの中身は、むしろ減る方向に動きます。燃焼を管理する側が高い温度と十分な滞留時間、そしてよくかき混ぜることを求めるのは、この分解を確実に効かせるためです。廃棄物を焼く施設の維持管理では、燃焼室の温度を摂氏800度以上に保つことが基準として置かれており、これは分解を効かせる下限の目安にあたります。
問題が起きるのは、そこを出てからです。ガスが熱交換器や集じん装置へ向かう途中で温度が下がっていくと、飛灰の表面で反応がふたたび動き出します。この再合成は、摂氏300度前後の温度域でとくに進みやすいことが知られており、飛灰に含まれる銅などの金属が触媒として働きます。燃やし終えた後の冷える過程こそが本番で、この区間をゆっくり通ると、せっかく分解したものが作り直されてしまいます。だから対策の柱は、低温域を素早く通り抜けさせる急冷になります。
この肢が見抜きにくいのは、前後の肢と組み合わせると一見つじつまが合ってしまうからです。二か所が生成の舞台だという記述が正しいので、そのうち一方で増え続けると書かれていても違和感が出にくい。しかし「生成が起こりうる場所」と「差し引きで増える場所」は別の話です。高温の区画は前者ではありますが、後者ではありません。正誤問題では、この二つを重ねて書いた肢がしばしば紛れ込みます。
覚え方
- 炉の中は高温部が壊す場、低温部が作り直す場。役割は正反対。
- 対策は「よく燃やす」と「速く冷やす」の二本立て。どちらが欠けても効かない。
- 生成に要るのは塩素源と炭素源、そして飛灰に含まれる金属という触媒。
- 塩素の出どころが無機でも有機でも、炎の中では同じ塩素原子になる。
- 「生成が起こる場所」と「差し引きで増える場所」を混ぜて書いた肢に注意する。
理解度チェック
燃焼している高温の区画では、生成と分解のどちらが優勢ですか。
分解です。熱で壊す働きが強いため、この区画を通ることで差し引きは減る方向に動きます。
排ガスを急冷するのは、何を防ぐためですか。
低温域での再合成です。摂氏300度前後をゆっくり通ると飛灰の表面で作り直されるため、その区間を短時間で抜けさせます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類概論 問題・正解」(公式PDF)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(焼却施設の維持管理の基準・燃焼室の温度)
※ この記事の確認日:2026年7月