平成29年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問22を解説|GC/MSに求められる分解能
平成29年度 ダイオキシン類特論 問22は、分離した成分を質量分析計で読むときに、どんな装置をどんな設定で使うのかを問う正誤問題です。誤っている記述を選びます。
この問題のポイント
並んでいるのは、装置の型式、質量を見分ける細かさ、質量のずれを抑えるしくみ、そして同定と定量のやり方です。どれも実際の分析室で毎日確認している事柄ですが、試験で問われるのは見分ける細かさに課された数値です。ここが甘い装置では、目的物質と重さの近い妨害成分が同じ山として重なってしまい、いくら前処理を丁寧にしても値が信用できません。数値を覚えているかどうかで決まる一問です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 細い管で成分を分け、電場と磁場を組み合わせた分析計で読む。この組合せが標準の構成です。 |
| (2) | ×(誤り) | 規格が求める水準は、分解能10 000以上です。目印の種類しだいではさらに上が要ります。示された二つの数値がどちらも足りません。 |
| (3) | ○(正しい) | 基準となる分子を流し続けて質量軸のずれを補正しながら、決めた質量だけを追う方式です。 |
| (4) | ○(正しい) | 出てくる時刻がそろっていることと、二本の山の大きさの比が合うことの両方で確かめます。 |
| (5) | ○(正しい) | あらかじめ加えた目印との比で量を出すため、途中の目減りが打ち消されます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
規格では、質量分析計が見分ける細かさを10 000以上と定めています。さらに、目印の種類とカラムの取り合わせしだいでは12 000程度まで求められます。出発点を8000と置き、上乗せしても規格の最低線に届かない記述は、規格が求める最低線をそもそも満たしていません。数字の大小を逆に覚えていると引っかかる作りです。
なぜこれほどの細かさが要るのかというと、実際の試料には目的物質と質量数が近い成分がいくらでも混ざっているからです。塩素を多く含む化合物の断片は、小数点以下でしか違わない位置に山を作ります。見分ける力が足りないと二つが融け合い、その分だけ量を多く読んでしまいます。見た目にはきれいな山が出ていても、中身が二つ重なっていれば値は過大になり、しかもそのことに気づけません。だから規格は、装置の性能そのものに下限を課しています。
この数値と組で押さえておきたいのが、質量軸を保つしくみです。装置は温度や汚れでわずかに読みがずれます。細かさをそこまで上げていると、ほんの少しのずれで山が窓から外れてしまう。そこで基準になる分子を常に流し込んでおき、その山の位置を目安に補正を掛け続けます。高い分解能と補正のしくみは、片方だけでは成立しません。あわせて、追いかける質量をあらかじめ限った検出方式にすることで、狙った成分に測定時間を集中させ、微量でも十分な信号を得ています。
覚え方
- 分解能は最低でも10 000。目印の種類しだいでさらに上を求められる。
- 高い分解能が要るのは、質量の近い妨害成分と山が重なるのを防ぐため。
- 重なりに気づけないまま値が大きく出る。だから装置の性能に下限を課す。
- 質量軸のずれは、基準分子を流し続ける方式で補正する。
- 定量は目印との比で行う。途中で目減りしても比は変わらない。
理解度チェック
高い分解能が必要な理由は何ですか。
質量数のごく近い妨害成分と山が重なるのを防ぐためです。重なると量を多く読んでしまい、しかも気づけません。
基準となる分子を常に導入しておくのは何のためですか。
質量軸のわずかなずれを補正し続けるためです。分解能を上げるほど、ずれの影響が大きくなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
- JIS K 0311「排ガス中のダイオキシン類の測定方法」(分解能の要求水準)
※ この記事の確認日:2026年7月