平成29年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問21を解説|前処理での試料の扱い方
平成29年度 ダイオキシン類特論 問21は、現場から届いた試料を実験室でどう受け取り、どこまで使い、何を残しておくのかを問う正誤問題です。誤っている記述を選びます。
この問題のポイント
前処理は、目的物質を溶媒の中へ移し、邪魔者を落として測れる状態に整える工程です。ここで一貫して働いている考え方は、ダイオキシン類が水を嫌い、油や樹脂や容器の壁になじむという性質から来ています。だから液体の中に均一に溶けている前提で一部だけをすくうやり方は通用しません。引っかけの核心はまさにそこで、水の試料をどこまで使うかという一点に置かれています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 捕集の担い手ごとに性状が違うため、別々に回収して目印を加えてから溶媒に移します。 |
| (2) | ×(誤り) | 水の試料は容器の中身をすべて使います。壁に付いた分まで洗い込まないと量が合いません。 |
| (3) | ○(正しい) | 容器が複数に分かれたときは、それぞれに同じ割合で目印が行き渡るように加えます。 |
| (4) | ○(正しい) | やり直しに備えて手元に残す運用です。もう一度採り直せない試料ほど価値があります。 |
| (5) | ○(正しい) | カラムから何mL目に目的物質が出てくるかを、実試料に近い液で事前に確かめておきます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
水の試料が均一な溶液であれば、よく振って一部を取り、後で倍率を掛ければ済みます。ところがダイオキシン類は水にほとんど溶けません。大半は浮いている微粒子に取り込まれ、残りは容器の内壁に張り付きます。この状態で一部だけをすくえば、すくった一杯に入っている量は容器全体の平均とはまるで違う値になります。粒子が沈んでいれば少なめに、巻き上げれば多めに出る。どちらにしても再現しません。
そこで前処理では、容器の中身をすべて使い切ります。水を移した後の容器は溶媒ですすぎ、そのすすぎ液も一緒に処理に回します。壁に残った分まで回収するところまでが手順のうちです。試料が大きくて容器が複数に分かれた場合も、考え方は同じで、それぞれの容器の中身を全部使います。そこで目印となる化合物も、容器ごとに中身の量に応じて割り振ります。一つの容器にだけ目印を入れて全体を代表させると、回収率の評価が他の容器に及ばなくなります。
この「全部使う」という原則は、他の操作にも一貫しています。捕集の担い手が複数に分かれる排ガスでも、ろ紙・吸収液・吸着剤をそれぞれ丸ごと処理します。逆に、抽出まで済んで溶媒の中に均一に溶けた段階になれば、一部を取り分けても構いません。抽出した液を少し取り置くという運用も、この前提で成り立ちます。均一かどうかを見きわめずに分取すると、そこで測定値の根拠が崩れます。
覚え方
- 水の試料は容器ごと全量を使う。すすぎ液まで回収する。
- 理由は水に溶けないから。粒に乗った分と壁に付いた分が偏る。
- 分取してよいのは、抽出が済んで均一に溶けた液になってから。
- 容器が複数なら目印も容器ごとに。濃度がそろうように配る。
- カラムの溶出範囲は、本番前に実試料に近い液で確かめておく。
理解度チェック
水の試料から一部だけをすくって測ると、なぜ値が合わなくなりますか。
水に溶けず、粒子や容器の壁に偏って存在するからです。すくう位置や振り方で値が変わってしまいます。
試料の一部を取り分けてよいのは、どの段階からですか。
抽出が終わり、溶媒の中で均一になった段階からです。抽出した液を少し取り置く運用も、ここではじめて成り立ちます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
- JIS K 0312「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法」(試料の全量使用)
※ この記事の確認日:2026年7月