平成29年度 公害防止管理者 ダイオキシン類特論 問15を解説|塩化ビニル原料の合成と塩素源
平成29年度 ダイオキシン類特論 問15は、塩化ビニルの原料を作る化学プラントで、二つの塩素化ルートがそれぞれ何を反応相手にし、どんな触媒を使うのかを問う穴埋め問題です。空欄に入る語の並びを選びます。
この問題のポイント
この工場には、性格の違う塩素化のラインが並んで置かれています。片方はエチレンに塩素分子をそのまま足す反応、もう片方は塩化水素と酸素を組み合わせて塩素を作りながら足す反応です。後者が併設されるのは、下流の熱分解工程で必ず塩化水素が出てくるからで、それを捨てずに原料へ戻すために存在します。分かれ目は二種類の塩素源をどちらのラインに割り当てるかで、さらに銅系の触媒がダイオキシン類の副生と結びつく点まで押さえておくと、迷わず一つに絞れます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)
各選択肢の正誤
| 空欄 | 入る語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | 塩素 | 二重結合に塩素分子を付加させるだけの反応。名前のとおり塩素をそのまま吹き込みます。 |
| イ | 塩化水素 | 酸素と組ませて塩素を生み出す側の反応。下流から回ってくる副生ガスを原料に転用します。 |
| ウ | 塩化銅 | 塩素の受け渡しを担う銅系の触媒。酸化と還元を往復して塩素を運びます。 |
ここが分かれ目
塩素をそのまま吹き込むほうの反応は、エチレンの二重結合に塩素分子がそのまま付加し、目的の中間体ができる単純な反応です。塩素をそのまま消費するので、反応式のうえでも塩素分子が要ります。一方の酸化塩素化は、塩化水素と酸素からその場で塩素を作り出し、それをエチレンに渡す仕組みです。ここで働くのが銅の塩化物で、銅の酸化数が行き来しながら塩素原子を受け渡します。鉄や亜鉛の塩化物を当てはめると、この酸化還元の往復が説明できません。
なぜ二本立てなのかというと、この中間体を熱分解して塩化ビニルへ変える段で、分子の半分の塩素が塩化水素として外れてくるからです。これを大気へ出すわけにも中和して捨てるわけにもいかないので、酸素と合わせて塩素へ戻し、もう一度エチレンにぶつける。工場全体で塩素を使い切る設計になっています。
ダイオキシン類の話につながるのは、この酸化塩素化のほうです。反応器の中には塩素と酸素、そして炭素と水素がそろい、温度も250〜300 ℃という帯にあり、しかも銅の化合物が触媒として存在します。これは焼却炉でダイオキシン類ができるときと同じ顔ぶれで、目的の反応の陰で、ごく少量ながら副生が起きます。だからこの工程は法令上も対象施設として扱われ、排ガス・排水の測定が求められます。直接塩素化のほうを副生の主役だと覚え違えると、対策の当てどころを外します。
覚え方
- 名前が答えを持っている。直接のほうは塩素、酸化のほうは塩化水素と酸素。
- 酸化塩素化の触媒は銅。塩素を運ぶ役として酸化数を往復する。
- 酸化塩素化がある理由は、熱分解で外れる塩化水素を捨てずに戻すため。
- 塩素と酸素+炭素と水素+金属+250〜300 ℃は副生の役者がそろった状態。
- 鉄や亜鉛の塩化物を触媒に据える選択肢は、この工程では選ばない。
理解度チェック
塩化水素を使うほうのラインを並べて置くのは何のためですか。
熱分解の段で外れてくる塩化水素を原料へ戻すためです。工場全体で塩素を使い切る設計になっています。
塩化水素と酸素を使う工程で副生が起こりやすい理由を三つ挙げてください。
塩素と酸素、そして炭素と水素がそろうこと、温度が数百℃の帯にあること、銅の化合物が触媒として存在することです。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月