平成30年度 公害防止管理者 大規模大気特論 問10を解説|鉄鋼業の硫黄酸化物防止対策(主な発生源は焼結炉)
平成30年度 大規模大気特論 問10は、製鉄の現場で硫黄酸化物を減らすために何をしているかについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
製鉄所には、原料を焼き固める設備、コークスを作る設備、鉄を溶かす設備、鋼片を温める設備が並び、それぞれ性格の違う排ガスを出します。四つの記述は、排ガスに合わせた脱硫の使い分けと、燃料そのものを減らす取り組みを述べたもので、いずれも実際に行われている内容です。分かれ目はどの設備が硫黄酸化物の発生源として最も大きいかという一点で、そこだけが別の設備の名前に差し替えられています。硫黄がどこから持ち込まれるかを追えば見抜けます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 7割前後を占めるのは加熱炉ではなく焼結炉です。これが正解です。 |
| (2) | ○(正しい) | コークス炉ガスは燃料として使う前に、アルカリ吸収液に硫黄分を吸わせる湿式脱硫法で処理されます。 |
| (3) | ○(正しい) | 大量で低温の焼結炉排ガスには、活性炭などに吸着させる乾式脱硫法が用いられます。 |
| (4) | ○(正しい) | 省エネルギーを進めて燃料使用量そのものを減らせば、持ち込まれる硫黄分が減り発生量も下がります。 |
| (5) | ○(正しい) | 高炉ガスや転炉ガスを所内燃料として使えば、その分だけ購入燃料の使用を抑えられます。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
焼結炉は、細かい鉄鉱石に粉状のコークスなどを混ぜ、上から着火して下向きに空気を吸い込みながら、粒をつなげて塊にする設備です。ここでは混ぜ込んだ粉コークスが原料層の中で燃えていくため、その硫黄分が酸化して二酸化硫黄になります。しかも空気を吸引しながら焼く方式なので、扱う排ガスの量そのものが非常に大きくなります。硫黄の持ち込み量と排ガス量の両方が大きいことから、鉄鋼プロセスの硫黄酸化物発生量のうち7割前後をこの焼結炉が占めます。
加熱炉は、圧延の前に鋼片を温めるための設備で、燃料を燃やす以上は硫黄酸化物を出しますが、量的な主役ではありません。「加熱炉からのものが7割前後」という記述は、発生源の順位そのものを取り違えており、ここが誤りです。
この順位が分かっていれば、他の記述との整合も見えてきます。焼結炉の排ガスは量が多く温度も高くないため、活性炭などに吸着させる乾式脱硫が向きます。一方、コークス炉から出るガスは所内の燃料として配る前に硫黄分を落としておく必要があり、こちらはアルカリ吸収液を使う湿式脱硫で処理されます。同じ製鉄所の中でも、排ガスの量・温度・使い道に応じて方式が選び分けられているわけです。加えて、省エネルギーで燃料使用量を減らすこと、高炉ガスや転炉ガスといった工程から出る副生ガスを回収して所内で使うことは、いずれも燃焼で持ち込まれる硫黄分の総量を減らす方向に働きます。装置を付けて取り除く対策と、そもそも出さない対策の両輪になっている点を押さえておきましょう。
覚え方
- 鉄鋼の硫黄酸化物の主役は焼結炉。加熱炉に差し替える引っかけに注意。
- 焼結炉で硫黄が出るのは、原料に混ぜた粉コークスが層の中で燃えるから。
- 脱硫の使い分けは、焼結炉排ガス=乾式(活性炭など)、コークス炉ガス=湿式(アルカリ吸収液)。
- 量が多くて温度の低い排ガスは乾式、燃料として配るガスは使う前に湿式で落とす。
- 発生源対策は、省エネで燃料を減らす/副生ガス(高炉ガス・転炉ガス)を使い切る。
理解度チェック
鉄鋼プロセスからの硫黄酸化物の発生で、最も大きな割合を占める設備はどれか。
焼結炉です。原料に混ぜた粉コークスが層の中で燃えて硫黄分が酸化し、しかも空気を吸引しながら焼くため排ガス量も大きく、鉄鋼プロセス全体の7割前後を占めます。
焼結炉排ガスとコークス炉ガスでは、それぞれどのような脱硫法が使われるか。
焼結炉排ガスには活性炭などを用いた乾式脱硫法、コークス炉ガスにはアルカリ吸収液による湿式脱硫法が用いられます。排ガスの量や温度、そのガスを燃料として使うかどうかで方式が選び分けられています。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月